テレビ版『うる星やつら』の初期には、ラムは元々は侵略者として登場したという設定が存在した。しかし、面堂終太郎や花和先生といった途中で参入した登場人物達は、誰もラムを知らなかったのである。序盤で何度も大事件の原因として全国的に報道された諸星あたるも、すぐに何故か全国的有名人ではなくなってしまった。
この謎の解決策の一つとして、以前私は第130話で示唆された無数の平行世界の存在を挙げた(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20110501/1304259835)。
しかし記念すべき第1話を、「絶対的に無かった事」にしてしまうのは惜しい。そこで他の可能性も三つ程考えてみた。どれも原作の考察にも応用出来るものばかりである。
第一の説は、「映画『完結篇』に登場した記憶喪失装置は、過去にも何度か使用されていた。」というものである。ラムの主要な知人だけは例外とする使い方もあるのならば、これによる解決も可能である。
第二の説は、「鬼ごっこ対決は実は秘密裏に行われており、放映されたかに見えるテレビ番組は、実は諸星家のみに配信されていた。」というものである。世界的パニックを回避するためにも、最重要人物の身柄の安全の確保のためにも、情報統制は必須であろう。
第三の説は、「鬼ごっこ対決自体が、周到に演出された虚偽であった。」というものである。ワープ等を自由に出来る進んだ文明にとって地球一個を支配する必要性はなさそうであるし、十日間もかけて鬼ごっこをして負けたら引き上げるというのも非合理的である。
またあたるについても、原作の初期では「この世の不幸を一身に集めてしまう」という設定があった。テレビ版ではこの設定は強調されなかったが、第23話「恋のバトルロイヤル」でのサクラの「諸星あたるは化物を呼びやすい性質を持っている」等、それを匂わす発言は多い。
ところが映画『リメンバー・マイ・ラヴ』・『ラム・ザ・フォーエバー』では、友引町が妖怪変化の溜まり場である原因はあたるではなくラムである事になっており、いつの間にかこの設定が消えていた事は明らかである。
これの原因についても、130話のみを根拠に強引に押し切ってしまう事は可能だが、他の要因も考えてみた。これも原作に応用可能である。
第41話「決斗!あたるvsあたる」で、錯乱坊はこの世の禍を饅頭に封じ込めて土の中に埋めようとしていた。この話自体は、二人に分裂した上にその後性格まで同じになったあたるを元に戻せなくなった事が錯乱坊により明言されているので、ストーリー進化の袋小路として他の話においては「無かった事」にされている。
しかし錯乱坊にこの世の禍を封じ込める能力があるとすれば、他の分岐においても、見えない所で禍の封印をしていた可能性は高い。これにより、あたるの不幸な性質自体が禍として封印されたのかもしれないし、あたるが呼び寄せていた種類の禍の多くが封印されたのかもしれない。
なおこの41話を「ストーリー進化の袋小路」と前述したが、実はストーリーの「正史」に位置付けるための方法もある。
饅頭をあたるに食われた錯乱坊が「だが、埋めてしまわなければ禍を封じることにはならん。世の為じゃ。おぬし、この穴に入れ。」と言う場面がある。非常に残酷な想像だが、ラストにおける本人同士の喧嘩で負けた側のあたるは埋められてしまい、故に生き延びた側のあたるはその後は不幸から逃れた、という解釈も可能である。
また原作に限っては、「サクラに取り付いていた病魔達とあたるの不運とが合体して一体の死神になり、その後何らかの方法で死神が追い払われたから。」という別の説も考えられる。ただしこの話を基に作られたアニメ版第9話「謎のお色気美女サクラ」では、病魔達はサクラから離れてあたるに取り付いただけなので、この説は採り難い。
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