『新サクラ大戦 the Animation』全話視聴計画第10~12話

第10話:帝都壊滅?ツングースカの怒り

 前回終盤の戦いの行方は曖昧であったが、今回の冒頭ではクラーラはカミンスキーに確保されており、帝国華撃団の霊子甲冑も完全に破壊されたさくら機以外の機体も半日かけて修理しても八割の性能しか出せない所まで壊されてしまっていたので、どうやら敗北のまま終わったようである。

 カミンスキーは第3話のドロップアイテムとしても登場していた水色に光る謎の結晶をクラーラに埋め込み、更にクラーラをセバストーポリに接続する。これで山一つ消し飛ばせる兵器が完成した。

 そしてその実力をもって全世界に24時間以内の降伏を迫った。

 「ハンサムな元文官の軍人が、陰謀によって水色に光る結晶の力と数奇な遺伝子を持つ少女とを確保したことで、大量破壊兵器を有する空中要塞を操る能力を得る」というのは明らかに『天空の城ラピュタ』へのオマージュであろう。

 ただし『ラピュタ』では「数奇な遺伝子を持つ少女」の能力は中盤から不要となっていたので、小説版ではムスカがシータをラピュタの中枢までわざわざ案内してしまった失態の説明に苦労していた。

 そういう意味では、最後までクラーラの力がカミンスキーにとって必要という設定を作った本作は、ラピュタを参考にしつつもしっかりとその問題点を乗り越えた作品に仕上がっているといえる。

 欧州では有力者と入れ替わってカミンスキーの言いなりになって華撃団連盟を混乱させていたロボットたちを神山が粛清するが、それでも世界各国はカミンスキーへの降伏論のほうが有力との事である。

 それでも帝国華撃団は弱体化した機体や旧式機や欠陥機を活用してカミンスキーに挑む。白秋も生身で挑む。

 今まで私が体験したサクラ大戦は、プレイヤーへの配慮のため終盤になるに従ってより強力な機体が与えられてきたものである。しかしこのように終盤になる程に兵器がポンコツとなり、それを創意工夫で何とかする方が、リアリティがあるだろう。だからプレイヤーのいないアニメだからこそ出来た美点である。

 今後の『サクラ大戦』シリーズは元より、他のゲームでもアニメでも展開する全ての作品に見倣って欲しいのは、本作のこのような姿勢である。一方が一方の単なる外伝であってはならない。「その媒体だからこそ出来る表現」を追求して欲しい。

 なお帝国華撃団と白秋は司馬が開発していた射出機「大弓くん」でセバストーポリに撃ち込まれ、無事に外壁を破ったのちに中で活動する。

 「あんなに簡単に外壁を破れるなら、あれでミサイルを撃ち込めば一瞬で勝利は確実ではないか!」と思った。

 勿論可能ならばクラーラを救うためにいきなりそういう荒っぽい行動はしない事にしたのだろうが、本当にいざとなったらそれで全部解決である。

 なお『サクラ大戦物語 ~ミステリアス巴里~』*1でも、リボルバーカノンの技術を巨大な砲門として活用する発想が登場していた。

 『サクラ大戦2』以降の設定が遡って採用された『サクラ大戦~熱き血潮に~』でも、聖魔城に対して陸軍省が余裕の姿勢を見せていた。これと同様に、おそらく「大弓くん」の活躍によりセバストーポリの「もろさ」を知った世界中の権力者は、もう胸を撫で下ろしているころであろう。

第11話:悲恋幻想!レイラの想い

 前回の題名にフライングで登場した「ツングースカの怒り」とは、例の大量破壊兵器だったと判明する。

 カミンスキーはこれで帝都の人々を人質にとった心算だったようであるが、白秋によって破壊される。そこでカミンスキーは超能力で遠隔での修理を開始し、レイラに時間稼ぎを命じる。

 このあたりでの対話により、カミンスキーは史実におけるツングースカ大爆発と類似する大爆発の後、爆心地に遺されていた謎の結晶により不老不死等の超能力を得たのだと判明する。

 なお自分で自分を神だと思う前に白秋の事を神だと思い込んでいた時期もあるらしく、今では彼女の事を「偽りの神」と見做していた。白秋もやはりツングースカ大爆発で超能力を得た人物の一人なのであろうか?

 長らくカミンスキーの言いなりだったレイラは、妹であるクラーラを救いカミンスキーを止めるために反抗を始めるが、粛清される。

 これを機にクラーラは暴走を始める。

第12話:大団円!明日への希望

 クラーラの暴走はさくらの説得で収まる。

 さらに世界中の華撃団の空中艦がセバストーポリを襲う。

 船のような形状の航空機が「音の壁」を破る速度を出すことは科学がいくら発達しようとも不可能なので、これは大急ぎで遠くから駆けつけたというよりは、初めから付近で待機していたと解釈すべきである。

 私は第10話で「あんなもろい空中要塞一つに、諸国が降伏などする訳が無い!」と思い、神山からの「降伏論が優勢」通信を疑ったが、あの通信はやはり味方すら騙して敵も油断させるためのフェイクだったと解釈すべきであろう。

 ここで思い出したいのが、第4話で扉への聞き耳だけで情報が洩れまくっていた件*2である。あの件を最初に見た時は私は大いに批判してしまったものだが、こんな事もあろうかと敢えて普段から防諜能力が低い様に思わせておいたと考えるべきなのであろう。

 この伏線には心底参った!

 そこでカミンスキーはセバストーポリがクラーラから吸収していたエネルギーを自分に移して自己強化をする。さらに撃墜後はセバストーポリの残骸と一体化して、巨大ゴーレムとなる。

 そして本人はこれこそが元々最終目的だったかのように言うが、他人から吸収したエネルギーは今後は目減りする一方なのであるから、ただの負け惜しみであろう。余程上手くいっても精々都市一つを破壊して終わりである。

 そしてさくら達の活躍でそれすら阻まれ、幽体のような状態のレイラに拘束され、カミンスキーは散る。

 「神」を称する大型兵器が女性の霊のせいで動けなくなるというのは『Zガンダム』のオマージュなのであろうが、自分が利用し殺した女の死体が放置されている要塞と融合したからこうなったという話の流れは、シロッコのケースより自業自得感が出ていて好感が持てた。

総評

 本編未プレイの者にも優しい作りであり、旧作や古典へのオマージュが見事であり、初見時には欠陥に見えた点すら伏線であったりしたので、大満足。

 敵の総大将の計画が杜撰過ぎたのだけが残念。

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