「理学がとらえる太陽と資源、エネルギー」を聴講

 第17回東京大学理学部公開講演会「理学がとらえる太陽と資源、エネルギー」(http://www.s.u-tokyo.ac.jp/event/public-lecture17/)を聴講してきました。
 開演直前にはほぼ満席になったため、内側の空席にずれるようアナウンスがなされました。嘆かわしい事に、私の視界の限りでは、この指示に従ったのは私だけでした。
 司会の院生は、聴講者にも教授にも敬意を払ったらしく、「御伺いしたい方は」等と口走っていました。腐っても鯛というか、理系でも東大の院生だけあって直ぐに自分でもおかしいと思ったらしく、これが却って禍して慌ててしまっていました。
 私は寛大なので平気でしたが、高齢の方々の中には腹立たしく思った人も多かったかもしれません。事業仕分けの猛威をかわすためには、今後は理系の研究者も社会性を磨いておいた方が身のためだと思います。
 最初の講演は柴橋博資教授の「われらが太陽」。
 10の26乗を、「10の後ろに0が26個付く」と、二度(!)も間違えて説明していました。普段の授業で出会う学生は、教授が多少間違った事を言っても脳内で正しく翻訳出来る者ばかりなのでしょうが、本日は中高生ぐらいの聴講者もいたのですから、もう少し慎重に喋って欲しかったものです。
 フレアについては「水爆一億個分」のエネルギーとか言っていましたが、水爆といっても威力には随分差があろうにと思ってしまいました。
 そうした細かな不満はあったものの、画像の巧みな編集がテレビ番組級に面白かったので、総じて満足でした。
 私には、中学生の頃にコロナの方が太陽の表面より熱い理由を教師に聞いてたじろがせたという思い出があります。本日はその問題についてどこまで研究が進んでいるのか「御伺いしたい」と密かに思っていたのですが、講演中に「不思議」で片付けられてしまいました。
 さて次は寺島一郎教授の「葉はなぜ黒くないのだろうか」。
 葉が緑に見えるという事は、主として緑の光を吸収しきれていない事を意味します。何故植物は、太陽光発電用のパネルの様に黒くなって効率化を図らないのか?その答えを教えてくれました。
 序盤は、理科の教科書の漫画とは異なる葉の断面図の中の葉緑体の実際の位置だの、通称Rubiscoの能率の低さだのといった、素人目には主題と関係が薄そうな専門的な話が続いていたのですが、終盤にそうした情報が一気に結論へと結びついたので感動しました。
 緑に見える植物も、実際には随分緑色光も吸収しているらしく、葉の内部で何度も緑光を反射させる事で、奥の方でも光合成が出来る仕組みになっているそうです。
 実験によると、一定以上の強さの光では、赤色光より緑色光の方が効率が良かったとの事。そしてあまり日の当たらない所にいる海松等は、黒い葉緑体をちゃんと作っているらしいのです!
 工場で効率的に野菜を育てるには緑色光なんか要らないという発想でピンクの蛍光灯を生産していた業界は、この研究成果によってパニック状態になったそうです。
 最後は松本良教授の「メタンハイドレートに非在来型エネルギー資源の可能性を探る」。
 既知の情報が多かったのですが、寒冷化もメタンハイドレードが大量に融ける原因になるという話は初耳だったので面白かったです。寒冷化で海水面が下がると水圧も減るという、言われてみれば当然の話なのですが、言われなければ気付かないのが凡人の悲しい所です。
 アンケートには、講演のレベルに関する質問がありました。寺島教授の話では知らない物質や用語に何度もぶつかった一方で、松本教授の話は前述の通り既知の情報が多かったのですが、個別の回答が許されていなかったので、仕方なく平均して「妥当」にチェックしました。