サクラ大戦 歌謡ショウ 五周年記念公演DVD スペシャルボックス「海神別荘」
- 出版社/メーカー: デジキューブ
- 発売日: 2001/12/07
- メディア: DVD
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内容は先週観た『紅蜥蜴』(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20130812/1376279031)と同じく二部に分かれており、前半では『海神別荘』の脚本が執筆中である時期の花組の日常が描かれ、後半は劇中劇として『海神別荘』が演じられていた。
サクラ大戦シリーズにおける『海神別荘』の公演としては、『サクラ大戦 活動写真』の劇中におけるラチェット=アルタイル主演のものがあるが、小説版の『サクラ大戦 活動写真』によれば、あれは本作における『海神別荘』を原作者の感想を取り入れて再演したものとの事である。
よって本作は1926年以前の話という事になる。
そして前半が「お盆の時期」である事が、藤枝かえでの発言で語られる。また大神一郎が帝都に居て、しかも薔薇組と既に知り合いであるので、1925年8月中旬であり、『サクラ大戦2』第五話「嬉し恥ずかし夏休み」の直後の話であると、かなり細かく時期を特定出来た。
なお、団耕助の「船も持ってたんですけどねぇ・・・。」という発言で観客が爆笑していた。おそらく、『轟華絢爛』第二話「水のある都市」で失われたダンディ号及びダンディ号二世を思い浮かべたからであろう。
だが、『轟華絢爛』の第二話でダンディ号・ダンディ号二世が失われた日に行われていた隅田川竜神祭の日程は、イリス=シャトーブリアンの部屋にあった少年レッドのカレンダーから、『青い鳥』公演初日の前日である1925年8月28日であると完全に判明している。よってここで団が言及した「船」は、これらとは別物であると考えるべきであろう。
ただし、当該発言の濁し方からして、かつて持っていた船への執着心は強そうであった。やはりこの「ダンディ号零世」もまた、ろくでもない失い方をしたのであろう。その執着心故に赤字覚悟でダンディ号を入手したと考えれば、『轟華絢爛』における部下達の不満の台詞との整合もつく。
また現実世界において本公演が行われたのは、2001年8月10〜18日との事であるが、最後のスタッフロールで8月12・14日にのみ出演した事が判る清水よし子氏が登場しており、楽屋ネタの台詞として前日が8月13日の「巴里花組特別ミニライブショウ」であった事を示唆する発言が散見出来たので、収録映像は8月14日のものであると特定出来た。
内容面では、五周年記念のせいか、真宮寺一馬の霊まで登場するという大サービスが行われていた。
実はこの時期、ゲーム本編では一馬の死体は京極慶吾によって「鬼王」として再利用されていたのだが、そういう場合でも、あるいはそういう場合こそ、精神体は自由に別行動出来るという設定なのであろう。
ストーリーも、真宮寺さくらと父一馬との関係を重視したものになっていた。
この主軸とは対比的に、父を失った後に怠惰に暮らし続ける稲荷寿司屋の生き様も描かれ、また普段はお気楽な印象のあるベロムーチョ武田の切ない生い立ちも語られていた。
全体の雰囲気は明るいのだが、シリアスな場面はきっちりシリアスに描き、メリハリが良かった。
前半の最後には花組のメンバーが全員で太鼓を叩く場面があった。劇の練習も劇中劇と並行して二つ抱えていたのに、良くもまあこれだけの技量を見せつけるまでの練習を積み重ねたものだと、非常に感心させられた。
後半はいよいよ本番、『海神別荘』である。
これは歌も踊りも演技も本格的であり、肉眼で観たかったものよと何度も思わされた。
そしてお笑いの要素も中盤できっちり入れていた。しかもその期間が終わると元の上品な雰囲気に戻ったのも、凄いと感じた。シリアスさとお笑いの要素の比率こそ逆転しているが、このメリハリの良さは前半に通じる。
一番興味深かったのは、女官達が衣装が和風と中華風の中間的な雰囲気のものであり、しかもどことなく韓国や琉球といった中間地帯の印象も微妙に兼ね備えていた点である。
実は泉鏡花の原作では、彼女達の衣服は「洋服」なのである。
これは大正時代と平成時代における、「異国情緒」の創り方の違いから来ているのであろう。
西洋の先進的な文物に憧れ、一部の洋服を着たハイカラさんが理想としての西洋を具現化していた時代にあっては、海底に存在する豊かな異国のイメージも西洋風だったのであろう。
そして猫も杓子も洋服を着るようになった現代にあっては、海の底の別世界では洋服でない何かを着ていなければ、我々は満足出来ないのであろう。
この辺りの面白い食い違いは、「大正浪漫」が正に夢に思い描いたであろう文明・政治制度を享受している我々が、それらを中途半端に享受しつつあった大正時代のレトロ臭にロマンを感じて『サクラ大戦』等のコンテンツを作ってしまうという現象と、同じ構造を持っている。
さて、このDVDには8月13日に一日だけ行われた「巴里花組特別ミニライブショウ」も収録されていたので、最後にこの感想も書いておきたい。
巴里花組のメンバーは、サクラ大戦において声優が舞台俳優を兼ねる伝統が出来てから選ばれた人達なので、非常に再現度が高いという後発優位性があった。
ロベリア=カルリーニの眼鏡の割れ目まで再現されていたのには、非常に感動した。
エリカ=フォンティーヌの発言に、天然ボケがほとんど含まれていなかったのは残念だった。
ヒロイン達には申し訳ないが、私が『サクラ大戦3』で最も愛したキャラであるシゾーの登場が、一番のサプライズであった。
これは私だけではなかったらしく、シゾーが登場した時の観客の盛り上がり具合は尋常ではなかった。
シゾーは言動もエリカより遥かに面白かった。ゲーマーにも脚本家にも強烈に愛されているのだな、と感じた。
サクラ大戦歌謡ショウ3 帝国歌劇団 第3回花組特別公演 紅蜥蜴 [DVD]
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