『牙狼<GARO>-炎の刻印-』全話視聴計画(第10〜12話・特別編)

第10話「破戒−FALLEN BLOOD−」
 ヘルマン・レオン・アルフォンソが合流し、エマの助力でサンタバルド城に潜入するが、行く手にベルナルドが立ち塞がる。ベルナルドが暗黒騎士になった理由は、本人の言を信じるならば、掟から自由になってヘルマンと全力で戦ってみたかったというだけの事らしい。
 この話の進行とは別に、メンドーサの回想等を通じて、様々な設定が明らかになる。
 メンドーサが悩んでいる全身に刻印が生じる症状は、かつて人間を犠牲にする禁断の発明をしたために、破門のついでに与えられた罰であった事が判明する。この発明の設定は、布道シグマの「イデア」に影響を受けたものであると思われる。
 破門後は後に王となるフェルナンドの側近として再出発を目指すが、子の誕生と同時に刻印が子々孫々にまで受け継がれる事を思い知らされ絶望し、とことん根性が曲がってしまったらしい。
 こういう危険人物を増やすだけの刑罰というのは、実に不合理である。どんなに優れた技術と戦闘能力を持った集団でも、思想的には当時の人間界のアンシャンレジーム的刑法思想から脱却出来ていないというのは、リアルと言えばリアルである。だが現代の視聴者がこういう集団に感情移入するのは難しい。
 一方、レオンの刻印の症状の原因はこれと似て非なるものであった。本来は母親であるアンナがレオンを守るために施した術であり、これが時としてレオンに負の要因として作用するのは、防衛本能と過剰にリンクしてしまっているからとの事である。
 王妃の侍女であったオクタビアがメンドーサの側近になった過程も描かれていた。彼女はメンドーサがホラーを操る姿を見てしまったのだが、元来が悪魔崇拝者であったため、寧ろ積極的に彼の側に付いたらしい。
 他には、粛清された王妃がサンタバルド城から橋で行くしかない塔の中に幽閉されているという事や、エマの目的があるホラーの追跡である事等も、明らかになった。
第11話「絶影−SHADOW SLASHER−」
 ベルナルドは自分の増援に来たホラーを粛清したり、レオンとアルフォンソが自分を無視して奥に進む事を黙認する。やはりヘルマンと戦いたいだけという本人の主張は、相当信用が置けそうである。
 回想シーンにおいては、自分達を魔女であると見做して攻撃をしてくる人類を、何故守らなければならないのかと悩むベルナルドの姿が描かれていた。
 そしてベルナルドを誘惑するメンドーサの主張は、掟に縛られている限り永遠に人の陰我が呼ぶホラーと戦い続けなければならないから、その「輪」から脱出しなければならないというものであった。
 無益な永遠性を「輪」と表現し、そこからの脱出を誘うというのは、仏教の影響がある発想である。要所要所に仏教の発想を入れてくる当たり、脚本家は『牙狼GARO>』シリーズの伝統に極めて忠実であると言える。
 そしてヘルマンとベルナルドは戦いを始める。
 魔導馬に乗った魔戒騎士と暗黒騎士の戦いは、『呀<KIBA> 暗黒騎士鎧伝』のコマーシャルで散々強調されていたが、そのシーンは実際にはバラゴの空想に過ぎなかった。今回の戦いで私は遂に暗黒騎士鎧伝で感じた不満から解放された。
 なお、こうして背景事情が延々と紹介され、レオンにとって乗り越えなければならない壁としての役割を持っていた筈の重要キャラに見えたベルナルドであったが、この戦いであっけなく死ぬ。これはかなり意外な展開であった。
 レオン達はメンドーサの元に辿り着くが、メンドーサは禁断の魔導具を用いて巨大なホラー「ブラッドムーン」を召喚する。
第12話「暁月−BLOOD MOON−」
 レオンは私情を引き摺っている事もあってメンドーサから先に倒そうとし、アルフォンソはブラッドムーンから先に倒そうとしたため、戦力が分散されてしまう。
 メンドーサはレオンのトラウマを見抜き、それを刺激する。ザルバによる調整も限界となり、時間切れの前に牙狼は心滅獣身状態となる。その強さでブラッドムーンに一撃を与えるが、サンタバルドの町も火の海にしてしまう。
 今迄は脇役の座に甘んじていたアルフォンソだが、民を守るという強い使命感から強大な底力を発揮し、牙狼の心滅を解除する。しかも地面に刺さった牙狼剣を易々と抜いて、牙狼の鎧を自分が装着する。
 メンドーサはアルフォンソに気を取られ過ぎて、自らが召喚したブラッドムーンに食われてしまう。ブラッドムーンも牙狼となったアルフォンソの前には簡単に敗れる。
 牙狼の鎧はアルフォンソを新たな主人と認め、アルフォンソは私情に流されて牙狼の鎧に見捨てられたレオンを批判する。レオンは廃人なって何処かへ去る。
 しかしその後、アルフォンソにとって衝撃の事実が判明する。自分が戦いにおいて私情に流さずに済んだのはメンドーサが王妃を人質として活用しなかったからであり、何故活用しなかったかというと、王妃が戦いの直前に自害していたからだったのである。
 人間関係の一新、事件の一応の解決、巨大ホラーとの戦いと、前半の締め括りとしての色彩の強い回であった。
特別編「饗応−DAYBREAK−」
 主要登場人物の声優達の対談を通じて、総集編と名場面の紹介を行う。
 シリーズの中盤に総集編的な回があるアニメは多いが、大概は何らかの不自然さを伴っている。それに対して、ここまで開き直った趣向は、非常に清々しいものがある。