『まぼろし探偵』全話視聴計画(第2・3話)

第2話 時限爆弾
 マンダレイ国のリマール王女が来日して箱根湯の花ホテルに宿泊しており、マンダレイのある派閥は、日本人の協力者を使って彼女を殺す事で本国に大きな動揺をもたらし、不利な情勢を一気に打開しようとしている。
 そうした御大層な設定から始まったのだが、王女には侍従どころか護衛すらいない。しかも同じホテルには民間人の吉野さくらや暗殺計画の首謀者であるシバタも自由に宿泊している。一応美智子皇太子妃には会えたという設定になっているが、本国も日本政府も王女をさして重要視していない様である。してみると王女が爆死すれば本国に大きな動揺が発生するというのは、追い詰められた弱小組織の希望的観測に過ぎなさそうである。
 日の丸新聞の記者である富士進と黒星十郎は、王女の取材に箱根を訪れる。日の丸新聞は、編集長の手下が黒星を含めて五名ぐらいしかいない弱小新聞社である。そしてホテルにはこの二人以外にマスコミが来ている様子は無い。小国の悲哀を感じる。
 取材中、王女はまぼろし探偵に会ってみたいと言う。まぼろし探偵、中々の知名度である。乗り物のお陰であろうか?
 その頃、内通していたホテルマンの手引きで王女の部屋に忍び込んだシバタは、日本人形の「藤娘」が飾られているのを発見し、それを利用する事を思いつく。そして部下のコマエに何かを命じるのだが、その様子を見ていた進は黒星をホテルに残してコマエの車を追う。
 翌日(?)、母・妹と一緒に池袋の西武デパートに出掛けた進は、人形売り場で偶然にもコマエを発見する。そして一味の東京におけるアジトを発見する。
 夜、黒星から富士亭に電話がかかってくる。黒星から聞いた情報から、進は王女の部屋の藤娘を時限爆弾付きのものにすり替えるという企みを見抜く。また爆発の時刻も午後8時であるという見当が付く。
 ここからがハードスケジュールである。
 黒星との電話を終えたのは7時20分なのだが、その直後に進はまぼろし探偵として再び黒星に電話をした様なのである。これは黒星がシバタの部屋を見張りながら「まぼろし探偵さん、何をやってんだろうなぁ。一体俺をこんな所に置いてどうしようってんだろ。判んねぇなぁ。」と言っている事から明らかだ。爆発時刻が迫っているというのに、随分暢気である。しかもわざわざまぼろし探偵の衣装に着替え、ようやくまぼろし号で箱根湯の花ホテルに駆けつける。
 するとそれまでは居なかった警官だか警備員だか判らない男が玄関に立っていて、「君々、何処へ行くんだね?」と質問をしてくる。まぼろし探偵は正直に「リマール王女の部屋です。」と答える。男は「駄目だ駄目だ。怪しい奴はホテルに入れちゃいけないと警視庁の富士警部から連絡があったんだ。」と言う。第一話でこの作品世界には埼玉県が存在しない事が判明しているが、この第二話の冒頭では箱根について「東京から車で三時間」と解説している台詞があったので、神奈川県は存在している様だ。こうしてこの男が、富士警部が私費で雇った民間の警備員であるという事が判明した。
 その後も会話は続く。「富士警部から?僕はまぼろし探偵だ。」「まぼろし?いよいよ怪しい。」「急ぐんです。通して下さい。」「待て!」世紀の大発明まぼろし号で大空を飛び回り、外国の王室にまでその名を轟かしているまぼろし探偵だが、流石に地方の警備会社の職員にまではその名は知られていなかった様である。
 結局爆発時刻にはぎりぎりで間に合ったものの、さして役に立たない黒星に無意味な指令を下したり、わざわざまぼろし探偵の衣装に着替えたりしなければ、もっと余裕を持って王女を救えたはずである。「まぼろし探偵さんのまぼろし号に偶然乗せてもらえた。」とでもすれば、7時20分に東京にいたはずの富士進の姿で7時50分頃に王女を救っても、正体はなんとか隠せただろう。
第3話 透明人間の恐怖
 何処かの森の中でまぼろし探偵が衣装を脱いでいるシーンから始まる。しばらく経過すると後方に二人の通行人が映るのだが、そんな場所で着替えるとは不用意な男である。
 やがて練習のためであろうか、電波ピストルの射撃で満開の花の木の枝を折る。その直後の独白では、「人や生き物を傷つけるものではない。一時的に痺れさすだけのものなのだ。」と特殊電波ピストルを解説している。
 またここでの独白の中では、富士警部は「鬼警部」呼ばわりされている。演じている天草四郎はいかにも善人面であるから、時代劇『鬼平犯科帳』で二代目中村吉右衛門演ずる設定だけが「鬼」の長谷川平蔵同様、ここでは少々違和感があった。しかし今回の話では、やがて鬼の鬼たる所以が明らかになるのである。
 さて今回の事件が始まる。長田博士が物質を透明化するスキトールという薬を発明するのだが、助手の松村ゴロウはピストルで博士に重症を負わせて薬を強奪する。軍需産業にでも売り払うのかと思えば、自分が透明になって、銀行から札束を盗んだり、食料品店から缶詰を一個盗んだりするだけである。しかも大笑いしながら盗むので、捕まらなかったとはいえ直ぐに犯行も正体も発覚する。どうやら単なる愉快犯の様である。世紀の大発明家の腹心という栄誉を捨てて強盗致傷の犯人に成り下がってまでしたかった事がこの程度とは、余程変わった性格なのであろう。
 富士警部は長田博士の病室を訪れ、「面会謝絶」と書かれた紙が貼ってあるドアをノックする。出てきた看護婦は、「鬼」を怖れたのであろうか、身分証を見ると一礼して警部とその部下を病室に入れる。
 長田博士の話によると、薬には副作用があり、36時間以内に別の薬を注射しないと生命が危険になるらしい。タイムリミット系の話が連続で出てきたのは残念である。勿論この脚本にはもっと残念な事が一杯あるのだが・・・。
 富士進は吉野博士に教えを請いに行く。博士は、犬の嗅覚が人間より優れている事を教えてくれる。そして警察犬を利用すべきだと助言してくれる。それを聞いた進は早速まぼろし探偵に変装して富士警部の前に現れ、警察犬を利用すべきだと助言する。警部は、「そうだ。何故今までそれに気が付かなかったんだろう。有難う、まぼろし探偵さん。」と返答する。第一話でも感じた事だが、やはりこの世界の連中は馬鹿ばっかりである。
 松村は危険を冒して中野のアパートの自室に舞い戻って警官隊を翻弄する等の行為を続ける。まぼろし探偵は中野に急行すべく、超新型ロケット機まぼろし号を飛ばす。また途中で偶然会った黒星十郎に、治療のための注射を取ってくる様に依頼する。
 松村は人質を取っていたが、まぼろし探偵が電波ピストルに吉野博士から以前貰ったレンズを取り付けて怪電波を発射すると、苦しんで倒れ、姿も現す。その時点でタイムリミットまであと5分であったのだが、富士警部は治療薬を用意していなかったらしく、ようやく長田博士の所から取ってこいという命令を下す。鬼である。まぼろし探偵が偶然黒星に出会い、親の性格を考慮してか念のため治療薬を取りに行かせていたから良かったものの、そうでなければ松村の命はどうなっていたか知れたものではない。

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