『まぼろし探偵』全話視聴計画(第4・5話)

第4話 狙われた408列車
 東京の銀行ギャングである猫山が静岡県で逮捕された。警視庁への護送は鉄道を使って行われる事となった。偽装として「極東商事株式会社」を名乗る猫山の仲間達七名は、猫山の奪還を計画する。それは爆弾で鉄道を転覆させ、その隙に乗じるという危険なものであった。
 担当の富士警部が静岡へ旅立つのを見計らい、極東商事の犬丸は東洋タイムズの記者を装って富士警部の家を訪ね、警部の妻である富士松子から護送に使用される列車の番号を聞きだす。しかし新聞記者である富士進は犬丸が偽の記者である事を見抜き、黒星十郎とともに犬丸を尾行し、極東商事の入っているビルを発見する。
 進はまぼろし探偵に扮装するため現場を一時的に離れる。一味も、犬丸ともう一人が先行して爆弾を仕掛けに行く。
 その後、黒星は先走って偵察に行き、捕まってしまう。ボスは「あんな奴がウロウロしているところを見ると、ここも安全とは言えんな。」と正しい認識を示しながらも、黒星を縛り上げて「田川と山田」に見張らせておき、三人だけで出発するという酷く思い切りの悪い決定をしてしまう。これから列車の転覆をしようというのだから、しかもアジトは捨てざるを得ないのだから、黒星を殺すなり捨て置くなりして予定通り五人で急行するというのが正しい決断であったと思われる。ともかくこれで敵は分断された。黒星の初手柄である。
 やがてまぼろし探偵が現れ、田川と山田の内の弟分の方を縛り上げ、黒星を解放し、兄貴分も追い詰める。列車転覆計画も見抜く。流石に父親の命が危ういので慌てたのか、まぼろし探偵は兄貴分を縛らずに「黒星さん、僕は直ぐ現場へ急行します。黒星さんは後から来て下さい。きっと特ダネものですよ。」と言って立ち去ろうとする。黒星は「こいつ縛っていかないと!」と叫ぶ。今回の黒星は手柄続きである。
 まぼろし探偵達は兄貴分の手だけを布で軽く縛って去る。おそらく直ぐに解けたであろうし、仮にこの状態のままでも弟分を見捨てさえすれば本人の逃亡は可能である。
 まぼろし号には結局黒星も搭乗する。現場到着後は黒星は姿を消し、まぼろし探偵が線路の爆破直前に極東商事の五人をなぎ倒して全てが解決する。その頃、田川と山田の少なくとも片方が逃亡に成功していたであろうが、それはまた別の話の様である。
第5話 二人のまぼろし探偵
 元は単なる盗賊団だったと思われる三人組が、第4話の「極東商事株式会社」に触発されたのか、「岸探偵事務所」に偽装している。親分は先生、兄貴は部長、子分は自称係長である。
 部長がまぼろし探偵の衣装を着て窃盗を行い、子分が逃走用の自動車を用意しておくというのが、所長の考えた犯罪計画である。現実世界でこんな事をしても単なる覆面窃盗に過ぎないのだが、吉野博士とまぼろし探偵以外にまともな知能の持ち主が存在しないこの作品世界内では、まぼろし探偵の捜査活動を鈍らせる極めて見事な計画である。
 最初の標的は「Men's Wear トップ」であった。事情聴取に当たった富士警部と部下の香山は、逃亡に自動車が使われたという話題が出ても車種やナンバーについては一切質問せず、犯人の服装の事ばかり尋ねる。こうしてまぼろし探偵に容疑がかかる。因みに「トップ洋装店って、いつも私が御洋服作る御店なの。」とは吉野さくらの談。
 やがて、さくら・富士進・黒星十郎の間で、さくらが本物のまぼろし探偵を探し、進・黒星コンビが偽まぼろし探偵の正体を暴くという競争が始まる。
 進の調査方法は、ぶらぶら歩くだけである。収穫はというと、金有という家を覗いていた挙動不審の黒帽子・黒コートの男を発見しただけである。しかも追跡には失敗。
 一方さくらは、探偵を雇ってまぼろし探偵を探させる事を思いつく。訪れた先は偶然にも岸探偵事務所。ここで黒帽子・黒コートの部長を目撃する。部長は、まぼろし探偵とは古くからの知り合いだのと適当な事を言って、さくらを帰す。この発言を伝え聞いた進は、岸探偵事務所への疑いを持つ。
 さくらによってもたらされた部長の特徴に関する情報は、「小柄・黒帽子・黒コート・普通の背広・怖い顔・小父さん」の六点だけである。それを聞いた進は、「確かにあの男だ。確かにあいつだ。」と決め付ける。進でさえこうなのだから、赤帽子・黒マスク・黄色マフラーの三点セットだけで部長がマスコミの大半にまぼろし探偵だと認識されたのも当然である。
 その後「大久保の金有家を何とか言ってた様よ。」という新情報が与えられると、進は「何、大久保の金有家・・・。」と遠くを見ながら新たな思考を開始する。してみると先程の発言で部長と確実に同一人物だと決め付けられた「あの男」とは、金有家を覗いていた人物とは別の誰かの様である。
 進はまぼろし探偵として父である富士警部に電話をし、大久保の金有家に来て欲しいと頼む。電話を横で聞いていた刑事が電話の相手が本物のまぼろし探偵であったかを確認すると、富士警部は「間違いなくまぼろし探偵の声だった。」と答える。自分の聴覚に大した自信を持っている様だが、その声が息子の声と同じである事に気付いていない以上、これは偶然正解だっただけであろう。オレオレ詐欺の無い時代に生まれてきたのは幸運である。
 金有家前にまぼろし探偵に扮した部長と子分が現れると、先んじて敷地内に侵入していたまぼろし探偵は門から出て来て「とうとう偽のまぼろし探偵の正体を現したか!」と言い、格闘を仕掛ける。さっさと物陰から電波ピストルを撃って二人を痺れさせてしまえば良かったのだが、拳で直接殴らなければ気が済まない程にストレスが溜まっていたのだろう。そうやって身勝手な私的制裁をしていたため、駆けつけた警官達はどちらが本物だか判らず、子分の偽証もあって一時的に本物の方を捕縛してしまう。後で失敗に気付いた警官は、余程偽証が腹に据えかねたらしく、「お前こそ偽物だろう。」という理不尽な発言とともに子分を緊急逮捕する。かなり不当な逮捕である。
 まぼろし探偵は結局部長を取り逃がす。しかも偶然まぼろし探偵を見掛けた黒星は、今度は子分の偽証すら無い状態であるのに勝手に彼を偽物扱いして襲い掛かる。「黒星さん。」と言われても「何が黒星だ!」と言って攻撃を止めない。自意識過剰のため、自分の顔と名前が偽のまぼろし探偵にまで知れ渡っていて当然だと思い込んだのであろうか?
 まぼろし探偵が岸探偵事務所に駆けつけると、明朝五時に村山貯水池に一人で来いという決闘状が残されていた。決闘状は大急ぎで書かれたとは思えない程に丁寧に書かれており、偽のまぼろし探偵の花押まで添えられていた。まぼろし探偵には一人で行かなければならない弱味は無かったのだが、自分の手で相手を殴りたいという思いからか、あるいはもう警察が信用出来なくなったのか、要求に従う。
 翌朝、部長が怪しい中国人風の紛争をした所長と並んで立っているのを発見したまぼろし探偵は、、「終に世の中の悪に与する、偽のまぼろし探偵の正体を現したか!」と言う。どこかで聞いた台詞である。
 最終決戦ではまず部長が銃の早撃ち勝負に敗れ、早々と退場。題名にまでなっていた敵にしてはあっけない。
 所長は怪しい中国人風の服装に合わせてナイフを数本投げるが全て外れる。するとまぼろし探偵は「正々堂々と鉄拳で制裁してやる。」と言って電波ピストルを捨てる。捨てたのが普通の銃なら素晴らしい武士道だが、「人や生き物を傷つけるものではない」「一時的に痺れさすだけの」銃を捨てたのだから、どう見ても単に腹癒せのための暴行がしたかっただけであろう。
 すると所長は今度は柔道着の日本人に変身。偽まぼろし探偵なんかより、遥かに魅せてくれる。勿論結局は敗北する。
 ここで突然話は終わる。『酔拳2』等にも言える事だが、格闘の前置きに力を入れておきながら後日談が無いと拍子抜けしてしまう。

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