『まぼろし探偵』全話視聴計画(第29・30・31話)

第29話 妖鬼現る
 オープニングのテロップでは白髪鬼の俳優が「?」と表記されているが、話が始まった途端に白髪の怪人がいつもの明石竜二の笑い声を響かせながら若い女性を誘拐しているので、明石竜二演じる「前川博士」なる人物が劇中に登場するのはその数分後であるものの、初めから白髪鬼の正体が前川博士である事が判ってしまう。
 白髪鬼に誘拐された女性は、前川博士の実験によって発狂し、ケラケラ笑いながら帰ってくる。実験台を殺してしまった方が事件は発覚し難いとも思えるが、知能犯だけあっていざ逮捕された時に死刑だけは免れようと保険を掛けたのかもしれない。
 帰還した女性の状態については、警察内部では「白痴状態」と呼称されている。山火編集長と富士進はマスコミ人だけあって夢遊病者の様」と言い換えている。黒星十郎は能天気に「馬鹿」と呼んでいる。
 前川博士は自身への疑いの目を逸らすため、「前川異状心理学研究所」の所員を発狂させ、白髪鬼の扮装をさせて世に解き放つ。これに乗せられたマスコミが白髪鬼捕まるとの報道をしてくれるのだが、前川博士はその直後にまた若い女性を誘拐してしまう。
 前川博士を疑うも決定的な証拠は発見出来なかったまぼろし探偵は、相手に判る様な形で延々と尾行をして心理的に揺さ振る。耐え切れなくなった前川博士、終に拳銃を抜いてしまった所をまぼろし探偵に叩きのめされる。
 重大事件の証拠が無い場合にまずは銃砲刀剣類所持等取締法別件逮捕してから取調室でゆっくりと泥を吐かせるという「高度」な手法を、少なくとも第27話の頃のまぼろし探偵は知らなかった。してみると、この数週間で新たに会得したのであろうか?
 ところで、第9話で成田裕演じる香山刑事は大塚刑事を「大塚君」呼ばわりしていたのだが、今回柳田健二演じる香山刑事は大塚刑事を敬って「大塚さん」と呼んでいる。第9話の香山刑事は既に警部であったので、大塚刑事が仮にその後で警部に昇進してもここまでの地位の逆転は不可能だろうし、更に昇進していたとすれば富士警部の部下である筈が無い。よって今回の香山刑事は、過去にホワイト館を攻めた香山刑事とは同姓の別人と思われる。
第30話 謎のジョーカー
 戦争中に南方から大量の宝石を持ち帰った柿島サブロウ、西暦1950年に大橋・泉山・幸田・江崎の四人組に宝石を奪われた上、崖から落とされる。片足が不自由になったものの奇跡的に生き延びた柿島は、10年後に復讐を開始する。復讐出来る力を回復するのに10年の歳月が必要だったのか、あるいは当時の時効の年数等が関係しているのかは、判らない。
 江崎・大橋・泉山を殺した柿島は、ビルの屋上でまぼろし探偵に追い詰められる。柿島は自分の犯罪の動機が復讐である事をまぼろし探偵に伝え、決して捕まらないとも宣言する。どんな仕掛けを用意しているのだろうと期待しつつ視聴していたのだが、何と柿島はビルから飛び降り、安全に着地し、逃げ去る。
 幸田は拳銃を不法に所持していた御蔭で、自分を殺しに来た柿島に対して優勢を保つ。しかし柿島は、10年前の強盗傷人事件は既にまぼろし探偵に伝えたと幸田を脅す。そうこうする内にパトカーの音が聞こえてきたので、幸田は銃弾を一発だけ発射して去る。柿島は腕を負傷する。
 幸田は船で海外に逃亡しようとするのだが、その前に10年前の事件を知るまぼろし探偵を念のため殺しておこうという無意味な計画を思いつく。もしも、柿島がまぼろし探偵以外にも事件を話していたり、柿島が事件について詳細に記した遺言状を書いていたり、そもそも柿島がまぼろし探偵に事件を話したというのが生き延びるために即興で思いついた嘘であったり、まぼろし探偵が既に事件の話を誰かに伝えていたり、まぼろし探偵の暗殺に失敗したりすれば、幸田の立場はもっと危うくなる筈なのだが、彼がそこに気付かない事こそ『まぼろし探偵』の欠点でもあり魅力でもある。
 しかも、せめて目撃者が居る可能性が低い場所にまぼろし探偵を誘い出せば良いものを、呼び出した先は神宮外苑。極めつけに、都市の真ん中で変装もせず消音装置も付けずにまぼろし探偵を狙撃する。
 最終的に、幸田は逮捕され、柿島は自殺する。
第31話 邪魔者は倒せ!
 「亜欧商事」を名乗る秋山・加賀・京子の三人は、カラヤン大使の暗殺を企てている。加賀はかなりのやり手らしく、何度もカラヤン大使暗殺をまぼろし探偵に邪魔されて失敗したものの、常にまぼろし探偵からは逃げ切ってきたという設定である。まぼろし探偵からの逃走に複数回成功した人物は現時点では彼のみであり、かなりの期待を煽られる。
 ところが明石竜二演じる親分の秋山は、いっその事まぼろし探偵を先に殺してしまおうという計画を立てる。第25話で標的の北條博士より先に足利博士を殺すという計画を立てた、明石竜二演じる本然を髣髴させる。
 秋山は日の丸新聞社を通じた伝言でまぼろし探偵を誘き寄せる。この誘き寄せ自体は確かに成功するのだが、そもそも本人を殺す目的で誘き寄せるよりかは、一時的にカラヤン大使の警護をさせないために誘き寄せるべきであった。手段が目的化してしまっている。
 狙撃の予定場所にはまぼろし探偵より先に黒星十郎が到着してしまう。すると秋山は「小手調べ」と称してまずは黒星から射殺しろという愚かな命令を下す。確かに小手調べとやらをすれば、一味の狙撃の腕前はほんの少し上達するであろうが、同時にまた命中しようと外れようとまぼろし探偵には警戒されてしまい、結局は損であろう。実際一味は黒星もまぼろし探偵も殺せずに終わる。
 まぼろし探偵も愚かな事に、黒星の特ダネを目当てにした追跡への参加の志望を受け入れてしまい、しかも黒星が足を痛めて落伍しかけると、結局黒星の心配ばかりして追跡を諦めてしまう。こうして加賀はまぼろし探偵からの逃走成功回数記録を更新する。
 次に京子は時限爆弾作戦を立案する。普通の時計に見える爆弾を黒星に渡し、まぼろし探偵に渡してくれと依頼する。この時京子は、「一ファンから。」とでも言えばいいのに、「さくらちゃんから。」と言ってしまう。当然ながら爆弾を受け取ったまぼろし探偵吉野さくらに電話をして真相を見抜く。
 翌日、亜欧商事の三人組はカラヤン大使館に潜入し、大使狙撃の絶好の機会にもめぐりあう。ところが死んだと思い込んでいたまぼろし探偵が大使の傍にいるのを発見した途端、秋山はまぼろし探偵を酷く怖れ、京子の反対を却下して大使を狙撃せずに撤退する命令を下してしまう。こんな所まで本然の事跡に似ている。
 その後、カラヤン大使が予定を繰り上げて帰国するという偽の発表がなされ、三人組は慌てる。
 新たに練られた策は、加賀が警官に化けてカラヤン大使を人気の無い場所に拉致するというものであった。この策は成功したかに見えた。しかし加賀は大使を殺そうとすれば殺せる状況でありながら、秋山が到着するのを待ち続ける。やはり秋山は本然同様無駄に絶対的な指揮権を持っていたのだろう。
 秋山が到着すると、加賀が拉致したカラヤン大使が黒星の変装した偽物であった事が判明する。そこへまぼろし探偵も到着する。加賀が黒星・大使館職員の二人に銃を向けて人質とし、それを背景に秋山がまぼろし探偵に銃を向けるという図が成立する。しかしちょっとしたハプニングを機に加賀の銃口が人質から逸れた瞬間、まぼろし探偵は秋山から銃を奪う。
 ここで一見すると不思議な事に、まぼろし探偵は人質を救う事よりも秋山を格闘で気絶させる事を優先する。一般論としては危険な行動だが、亜欧商事は秋山の命令に絶対服従型の組織なのだから、偶然にもこれは寧ろ正攻法であった。FC版の『熱血高校ドッジボール部』の対「それん」戦で、他の敵メンバーに多少油断してでも「もるどふ」から潰す様なものである。秋山は叩きのめされ、加賀は結局黒星も大使館職員も殺せないまま捕まる。
 しかし流石は『まぼろし探偵』史上最強の逃走の天才だけの事はあって、加賀はまぼろし探偵が黒星達の縄を解いている隙に、再び逃げ出す。だがまぼろし探偵にとっては都合の良い事に、加賀が川岸に着いてみると、亜欧商事が逃走用に用意していた舟は、情勢の不利を悟って裏切った京子が一人で乗り去った後であった。こうして奇跡的に加賀も叩きのめされる。
 まぼろし探偵は京子の存在を知っていながら、自分の面子のためか「これで事件は解決しました。」と言い張る。数日前に京子から時限爆弾を直接受け取った黒星も、特にその主張に異議を唱えない。京子関連の後日談も無いまま、話は完結する。

熱血高校ドッジボール部

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