『まぼろし探偵』全話視聴計画(第27・28話)

第27話 謎の仮面博士
 御大層な題名だが、国際科学者管理委員会の日本支部長であるジョンソン=ドナルドの正体が実は国際犯罪組織「紅髑髏団」の一員だったという事の、比喩的な表現に過ぎない。
 「ジョンソン=ドナルド」では姓が先で名が後になってしまうが、日本支部長だけあって帰化しているのかもしれない。
 吉野博士が「ウラン第8号X光線」を発明する。ボタン一つで地球を壊滅させられるものらしく、作中世界はこれが原子力戦争誘発防止になると概して歓迎ムードである。それにしても18年間没頭していた新型ロケットの発明を終えてから1年以内にこんなものを発明してしまうとは、実に侮れない人物である。
 ジョンソンは吉野博士に設計図の隠し場所として品川沖の無人島にある旧海軍の施設を紹介するが、ここが博士の監禁場所になる。
 紅髑髏団から吉野博士を誘拐したという声明を受け取った吉野さくらは、富士進・黒星十郎を伴って国際科学者管理委員会の日本支部を訪ねるが、ジョンソンに煙に巻かれる。しかし応接間に無造作に置かれていた吉野博士の鞄を発見し、疑いを持つ。
 進と黒星は更に潜入捜査を続け、吉野博士の手紙や肉声を録音したテープを発見する。また黒星は、旧海軍施設の地図を入手する。こうも簡単に重要な証拠を発見されてしまうとは、ジョンソン一味はとことん無用心な組織である。
 余談だがここで、吉野博士の下の名前が「センゾウ」である事が判明する。
 進と黒星に気付いたジョンソン一味は銃を持って二人を追う。途中で姿を消した進はまぼろし探偵に変装し、黒星を救うため再びジョンソン一味の前に姿を現す。
 ここでまたまぼろし探偵は第18話と同じ失敗をやらかす。圧倒的に有利な状況で、誘拐の証拠も相当揃っており、少なくとも銃の所持の件だけでも逮捕が可能な筈なのに、黒星を救うだけで満足し、敢えてジョンソン一味を見逃すのである。
 しかもまぼろし探偵何故かまぼろし号を使わず、黒星と舟で吉野博士を救いに行く計画を立てる。その計画はジョンソン一味の前で語られる。
 やはりこの番組は、『33分探偵』の偉大な先駆である。
 地図に従って海岸にやってきた黒星は、ジョンソン一味が律儀に紅髑髏団の制服に着替えている所を発見する。ここで黒星は紅髑髏団員に地図を奪われるが、不思議な事に命までは奪われなかった。自分達の正体を目撃した人物を殺さなかったのは、先程まぼろし探偵に見逃して貰った一件への返礼であろうか?
 遅れて到着したまぼろし探偵は、黒星と合流して紅髑髏団を追う。紅髑髏団は手漕ぎボートで海に逃れる。まぼろし探偵達も手漕ぎボートで追う。不思議な事にオールを漕ぐ役目はまぼろし探偵が担う。黒星が漕いでいればまぼろし探偵は特殊電波ピストルを撃てた筈なのだが・・・。結局まぼろし探偵達はジョンソンにオールを狙撃されて追跡に失敗してしまう。ジョンソンのピストルには弾が一発しか入っていなかったのか、その後はまぼろし探偵達を狙撃せずに去る。
 ジョンソンは例の録音テープを活用し、深夜に吉野博士の振りをしてさくらから博士の実印を略取する。この状況下で危険を冒して実印を入手する事に如何程の意味が有ったのかは不明である。単に日本の判子文化を誤解していただけかもしれない。ともかくこの時残した足跡から、警察もジョンソンが吉野博士誘拐の犯人である事を見抜く。
 その後まぼろし探偵は、吉野博士の監禁場所として旧海軍の施設を疑い、捜査をする。当然これは図星で、吉野博士は救出される。
 国際科学者管理委員会日本支部にも警察の捜査が及び、まぼろし探偵の加勢もあって支部は壊滅する。
 部下や取引相手と共に支部からの逃亡に成功したジョンソンであったが、品川沖の海岸にはまぼろし探偵が先回りしていた。「悪党らしく観念しろ。」という謎の台詞で投降を勧告されたジョンソン一味、余程腹が立ったのか逃走を中止してまぼろし探偵との戦いを開始する。
 ジョンソン一味は一時的に優勢に見えたが、この状態に油断して全員でのこのことまぼろし探偵を追いかけて自動車を留守にしてしまう。結果、逃走手段である自動車は当然ながら直ぐ後から来た警察に確保され、しかも中に置きっ放しになっていた紅髑髏団の制服まで発見されてしまう。
 警官隊の援軍に気付いた一味は、まぼろし探偵を追い詰めるのを止め、走って逃げる。ジョンソンは猛スピードで上手に逃げていたのだが、特殊電波ピストルの攻撃で倒れた部下を救うため「おい大丈夫か?」と言って引き返したために捕まる。

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第28話 スパイ?
 オープニングの配役で「狂人」という役名が登場する。彼は作中では「気違い」だの「気違い野郎」だのと呼ばれる。しかも話の筋書きからは、彼がそうした役柄で登場する必然性が感じられない。
 他にも吉野さくら「田舎者」という言葉を平然と差別的文脈で使用する等、現在では再放送が困難な内容である。
 話の筋書きは、手広く情報を違法に集めては他の組織にそれを売るのを稼業にしていた組織が、最後にはまぼろし探偵と警察に滅ぼされるというものである。
 この組織、序盤では、誘拐の目撃者を背後から心臓を抉り出して殺す等、非常に用心深い上に残忍という印象がある。
 ところが中盤では、都内で大きな銃声を響かせて射殺するという杜撰なやり口で裏切り者を始末してしまう。しかも瞬殺には失敗。被害者は事切れる前に、銃声を聞いて駆けつけた富士進と黒星十郎に情報を伝える事に成功する。
 更に終盤になると、犯罪組織としては何故か無駄に人道的に飼い殺していた「狂人」にまんまと逃亡され、しかもその追跡中に構成員の一名をまぼろし探偵に捕獲されるという大失態を犯す。
 してみると、題名に疑問符が付いていたのはこの組織のスパイとしての資質を疑っての故かもしれない。
 その他の失点としては、吉野博士の助手の木村なる人物を誘拐しようとして、木村に変装した黒星十郎を誘拐してしまい、しかもその間違いに最後まで気付かなかった事が挙げられる。ただし『まぼろし探偵』の世界では、どんなに親しい人間が変装をしても、またどんなに親しい人間への変装をされても、他人の変装を決して見破れないのは御約束なのだから、これは仕方が無い事である。