『まぼろし探偵』全話視聴計画(第11・12話)

第11話 怪盗紅バラ男爵
 今回から富士登の役者が天草四郎から大平透へと変更となり、オープニングの「配役」におけるレギュラー陣の表記も一新されている。大平透は眼鏡をしていたり黒髪であったりと、天草四郎とは全く違う顔である。当時の子供達は納得したのだろうか?
 今回の「配役」には、他にも見所がある。
 まず紅バラ男爵の役者が「?」と表記されている。こういう昭和の風味はレトロ趣味を満足させてくれる。2004年版の『鉄人28号』でも、ニコポンスキーの声優が意図的に「???」と表記されていた。
 その左には、日下部登が一人で演じる西大路光春・庭師・山吹咲太郎の三役が並ぶ。これでもう大人は今回のトリックに気付く。
 山吹咲太郎の孫は山吹みどり。後の則巻みどりではない。彼女は吉野さくらの親友という設定である。
 さて本編であるが、紅薔薇男爵が狙ったのは山吹家の魔法のランプである。山吹咲太郎の解説によると、およそ2000年ぐらい前にエジプトの王様が使っていたもので、去年ピラミッドから発掘され、一週間前に山吹家に届いたものらしい。既にピラミッドが廃れていた時代の遺品がピラミッドから発掘されるという時点でどうにも疑わしい。しかもそんなものが一年もしない内に外国の民間人に売り払われる等、言語道断である。加えて、どこがどう「魔法」なのかも不明である。山吹氏はおそらく騙されて偽造物を掴まされたのであろう。そんな物を奪い取ろうとする紅薔薇男爵も愚かである。
 このランプの取材を最初に行ったのは日の丸新聞社である。大概の同業他社はランプの由来のいかがわしさを見抜いていたのであろう。
 黒星十郎はその取材の帰り道、謎の紳士にフィルムを奪い取られる。進は黒星からの情報を元に、フィルム泥棒と関係の深そうな家屋を発見するが、その時点ではそれ以上の進展は無かった。
 やがて紅薔薇男爵は魔法のランプを三日以内に盗むという予告状を山吹亭と富士警部に送りつける。それを聞いた進は、フィルム強盗事件が紅薔薇男爵の計画の一環である事を見抜く。また警部の口から、紅薔薇男爵の本名が「西大路光春」であるという情報が発せられる。
 そう、紅薔薇男爵は奪ったフィルムを現像し、それを参考にして大急ぎで模造品を拵えたのである。そして庭師として山吹亭に入り、咲太郎氏を縛り上げ、次は咲太郎氏に成りすまし、魔法のランプを自分が持ち込んだ偽物とすり替えたのである。これだけの変装の腕前があるなら本来は普通に奪えた筈であるし、予告状は結局トリックとは無関係であった。危ない橋を渡ったのは単なる自己満足のための様である。勿論まぼろし探偵は全てを簡単に見抜き、事件は解決される。
 それにしても一個人が当時の弱小新聞社の使用していたフィルムからの情報を基に数日で精巧な偽物を作れたぐらいなのだから、やはり魔法のランプとはその程度のものなのであろう。紅薔薇男爵は偽造中に「何かおかしい。」とか思わなかったのだろうか?

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第12話 青銅の仮面
 猟師のフジタ五平は、大菩薩峠で般若の面をつけた子供と出会い、化け物だと思い込む。このニュースを伝え聞いた山火編集長は、黒星十郎に調査のための出張を命じる。
 黒星はフジタに案内を頼むが、フジタは途中で猟銃を無理矢理黒星に押し付けて逃げ帰ってしまう。黒星はもしも警察に見つかっても「この猟銃は持ち主から無理に押し付けられたから返却するために持ち歩いていた。」と答えれば良いだろうが、フジタはこの一件が発覚すれば相当絞られるであろう。
 やがて般若の面の子供の正体は、大昔大菩薩峠一帯を支配していた人物の子孫である事が判る。その遺産である時価数億円の金塊は代々受け継がれてきたらしい。ブレトンウッズ体制下の金塊に時価も糞も無いと思うのだが、あるいは余程大量の不純物が混じっているのかもしれない。その遺産を狙う連中から身分を隠すため、付き人の作蔵は「若」に般若の面をつけさせたり粗末な服を着せているらしい。多少相続税等を取られても金塊を通貨に換えて一市民として安全に暮らす方が余程幸せだと思うのは私だけであろうか?
 そうした工作をも見抜いた四人組のギャング団は、若を攫う。作蔵が立ちはだかると、若を人質にして脅し、大打撃を与える。作蔵の工作を唯一見抜いた組織だけあってここまでは正攻法を採っていたのだが、やはり所詮は『まぼろし探偵』に登場する組織だけの事はあって、作蔵を殺さないどころか縛り上げすらしない。
 さてここで金塊の重さを計算してみよう。「数億円」と言うからには常識的には最低でも二億円はするはずだ。ブレトンウッズ体制下ではこれは約500kgである。銀等が混じっていて同じ価値であるならば、もっと重い。四人が山奥から一度に運び出せる量ではない。
 つまりこの四人は若を脅して金塊を発見しても、やがてまたこの山に戻ってくる必要があるのだ。痛みから一時的に蹲っていた作蔵も、その頃には再び立ち向かってくるであろう。その対策のためには人質を生かしたまま運び続けなければならない。よって、罪が発覚した場合に罰を軽くするために作蔵を生かしておくにしても、せめてここで一時の労苦を厭わずに縛り上げておくべきであった。
 そして最終決戦、四人組は突如出現したまぼろし探偵に対してそこそこ善戦している。しかし黒星と彼に助けられた作蔵の二人が背後から迫ってきたため戦力が分断されて敗北してしまう。作蔵への対処を怠ったのは、実に惜しかった。
 なお作蔵を演じた明石竜二は、第3話では透明人間松村ゴロウを、第4話では極東商事株式会社のボスを、第5話では岸探偵事務所の先生を、第6話ではスペード団員を、第8話では日系二世風の偽記者を、それぞれ演じてきた役者である。今回初めて正義役を演じていた上、ギャングにも不自然な形で助命されているので、ひょっとしたら作蔵こそ黒幕ではないかと疑った視聴者も多かったのではあるまいか?