『まぼろし探偵』全話視聴計画(第24・25話)

第24話 ウランの秘密
 神奈川県丹沢の山中が舞台。水原博士なる人物が、戦時中に同地でウランの鉱脈を発見していたという設定である。かつて水原の世話をしていた茂平老人は、水原の死後も遺児である次郎を育てていた。
 ある日、そうした境遇を明かされた次郎は、かつての水原の助手で城北大学に勤務している筈の木下教授にウランの鉱脈の地図を届ける様に命じられる。
 Cthulhu神話世界におけるミスカトニック大学の如く、城北大学と城南大学は『仮面ライダー』シリーズを筆頭とする日本の様々な特撮・ドラマで登場し続けている「名門」だが、これは実に古い使用例である。
 さて、東京に着いた次郎だが、二枚の地図の内の一方を謎の男に奪われてしまう。この男は犬山といい、ウランの鉱脈を狙う一味の下っ端である。この一味を仕切っているのはネルソンという外国人で、一味には原子物理学研究家の鬼塚博士なる人物もいる。
 次郎は城北大学を訪れるが、木下はアメリカ留学中に行方不明になっていた事が判る。そこで現場の判断で、もう一枚の地図を偶然知り合ったばかりの富士進に渡す。
 東京からの帰り道、次郎はネルソン一行に捕まってしまう。次郎はそこへ助けに来たまぼろし探偵を認識して、「まぼろし探偵さん」と呼び掛ける。電話も無い家で育ったにしては、意外に東京の情勢に詳しい。一方犬山はまぼろし探偵の存在を知らなかった。
 次郎を人質にする事でまぼろし探偵から逃れたネルソン達は、地図の片割れと鬼塚のあやふやな記憶を頼りに山を登り始める。
 まぼろし探偵は一連の事情を茂平に話す。茂平は次郎のためだの日本のウランを守るためだのと大義を掲げてからまぼろし探偵に案内を申し出るのだが、その後は二人でのんびりと休憩しているシーンもある。
 やがてネルソン達は山中でまぼろし探偵に倒される。
 まぼろし探偵は鬼塚に対し、「鬼塚博士、いや木下。」と言う。その後、「木下教授、いや鬼塚博士。」とも言っている。
 まぼろし探偵によると、木下教授は留学中に交通事故で顔を痛め、それを整形手術で治したため、以前とは似ても似つかない顔になったらしい。またそれを機に行方不明を装い、ネルソン達の組織と知り合い、「世界のウランを独り占めしようという陰謀の片棒を担いだ」らしい。
 最後に急に話が大きくなったが、それなら鬼塚はまずは木下として普通に次郎に接触してもう一枚地図を貰えば良かった事になる。覆面もせずに次郎を拉致したという事は、早晩殺してしまうつもりだったのだろうから、別に木下が生きていて今はどんな顔であるかを次郎に知られても損は無かった筈だ。

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第25話 ミイラ武者の復讐
 北條氏に滅ぼされた源一族の末裔で、鎌倉の本然寺に所属する本然・希然・願然の三人の僧が、上野の国立博物館から国宝であるヨリザネ公の笛を盗み、それを使ってヨリザネ公のミイラとやらを復活させ、北條一族の末裔である北條博士の命を狙う。
 「源ヨリザネ」と言えば、普通は11世紀の歌人を思い浮かべるものだが、笛は鎌倉時代のものだという設定が山火編集長から語られているので、別人であろう。本然が「620年前の恨みを晴らすのです。」とミイラに語りかけているので、中先代の乱にでも巻き込まれて殺された無名の人物かと思われる。
 博物館で他の物品を差し置いて敢えて笛だけが盗まれたのかを疑問に思った山火は、黒星十郎には考古学者の足利博士に、富士進には北條博士に、それぞれ笛の謂れを聞いてくる様に命じる。
 北條博士の屋敷を偵察していた願然は、足利博士がミイラ破りの方法を研究しているという話を盗み聞く。すると本然は、先に足利博士を殺すという、非常に迂遠な計画を立てる。
 しかもこの連中、足利博士の殺害までミイラにやらせたのである。ミイラが破られたらどうするつもりだったのだろうか?そんなにまでして殺生戒を破りたくなかったのだろうか?それにしても怪僧三人連れがミイラまで伴って住宅街を練り歩き、よくもまあ目撃・通報されなかったものである。
 黒星から足利博士がミイラに殺された事を聞いた富士進は、まぼろし探偵に変身し、ミイラが北條博士を今にも刺そうとしている現場に到着する。まぼろし探偵は特殊電波ピストルを撃つが、ミイラには効かない。ただしミイラは何故か北條博士への攻撃を中止してまぼろし探偵との戦いを開始したので、一応は彼が来た意義は有った事になる。
 本然の言動も謎に満ちている。ミイラに北條博士を殺す作業に戻れとも言わず、まぼろし探偵を殺させるでもない。しかも「警察でも来ると面倒だ。行こう。」と言い、偶然居合わせた足利博士の遺児の雪子を誘拐しただけで満足し、大笑いしながら立ち去るのである。
 希然だけは自分達の行動の辻褄が合わない事に直ぐ気付いたのか、第二の襲撃を提案する。しかし本然はミイラに手も足も出なかったまぼろし探偵を何故か警戒し、「今戻ればまぼろし探偵が待ち構えているに違いない。」と言い、挙句一旦鎌倉に帰るという弱気の決定をしてしまう。
 さて本然寺に帰還した本然、次の襲撃の日時を希然に尋ねられると、何と「明日」と答える。まさか一日もすれば警察もまぼろし探偵も北條亭を警護するのに飽きるだろうとでも思って鎌倉に引き上げていたのだろうか?
 北條亭を見張るために東京に一人残っていた願然は、翌朝簡単に捕まり、しかも本然寺の事も直ぐに白状してしまう。これにより、雪子はまぼろし探偵に救出される。
 なおここで、まぼろし号には二人までしか乗れないという設定が明かされる。
 雪子がまぼろし探偵によって北條博士宅に連れ戻された時、既に第二回目の襲撃が始まっていた。待ち構えていた警官隊が一斉に射撃をするが、ミイラの体どころか服にすら衝撃一つ与えられない。まるで空砲である。全弾、惜しくも外れたのかもしれない。
 だが雪子が父の遺品であるミイラ破りの笛を吹くと、ミイラは無力化される。希然は投降し、本然は逃亡する。
 ミイラは個体として評価すれば、間違い無く第16話の白狐をも越える最強の敵であっただろう。しかし本然が『まぼろし探偵』に登場する愚かな指揮官達の中でも抜群に無能だったため、こうして残念な最期を迎える事となった。
 追いかけてきたまぼろし探偵に対し、本然は隠し持っていた拳銃で立ち向かう。こんなものを持っているのなら、ミイラ武者による復讐が不可能となった時点で、次善の策として狙撃による復讐を行えば良かったかと思われる。それとも彼の一族には、「ミイラ以外の方法で北條氏に復讐してはならない。」という規則でもあったのだろうか?