毒草

十年前、毒の花に瘴気を浴びせられた。
肌は爛れ、胃は荒れ、疲れやすくなった。
知恵は消え、精神は不安定になった。
私は人間ではなくなった。
 
十年後、毒の花に瘴気を浴びせた。
体からも、心からも、毒は消えた。
私は人間に戻ってしまった。
しかし人間の世界には戻れない。
 
ふと足元を見ると、毒の花が無惨に枯れていた。
嗚呼、御前はこんなにも弱かったのか。
あの時、生きるために必死に毒を吐いたのか。
今日の私の様に。
 
私は大人しく毒で死ぬべきだった。
花は美しく咲き続けただろう。
私も血縁のある他人の葬儀に出席しなくても済んだだろう。
私は大人しく毒以外の原因で死のう。