『まぼろし探偵』全話視聴計画(第1話)

 まぼろし探偵の全話視聴計画を開始する。2007年にエムスリイエンタテインメントから出された盤を使用する。

まぼろし探偵 DVD-BOX

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 まずはオープニングである。ナレーターが、原作にない設定である、吉野博士から譲り受けた「空陸両用の超新型ロケット機まぼろし号」と「特殊電波ピストル」とについて語ってくれる。
 原作のまぼろし探偵は、民間人でありながら日本国内で拳銃を撃ちまくり、しかも警察からその行為を咎められないという不思議なキャラクターであった。原作世界では、『DEATH NOTE』の後半の様に、悪を滅ぼすための犯罪なら黙認せよという圧倒的な世論でもあったのかもしれない。
 テレビ放映にあたってこうした改変がなされたのは、おそらく青少年への悪影響を考慮しての事だろう。しかしナレーターがこの二大兵器について語ったまさにその直後、背後で歌われていた主題歌が「二丁拳銃火を吐けば、悪者最後の時なのさ。」という部分にさしかかるのは皮肉である。
第1話 「謎の怪電波」
 冒頭、東京中のテレビが同時に乱れる現象が頻発している事が示される。
 やがて石森金之助亭にKKKの様な外見をした二人組の賊が忍び込み、「お前の祖先がむかし我々の祖先から盗みとった秘宝、近く頂戴にあがる #党(#部分は拳マーク)」という予告状を残していく。
 窃盗の予告状というのは珍しい。こんな事をするのは、犯罪それ自体を楽しむ輩か、相手の警戒自体につけこむという天才的なトリックを用意している連中だけの筈だ。第1話からかなり期待出来そうだと感じた視聴者も多いだろう。
 しかし直ぐにその予告状を送った犯罪組織の内部事情が明らかになる。山を登って基地に着いた二人の党員が、警視庁の捜査が本腰になったと報告すると、№2と思われる老人は「そうか、いよいよ警察が動き出したか。愚図愚図はしておられんぞ。時に石森の方はどうじゃ。」と答えるのである。あんな予告状を送ったら警察が動き始めて当然だと思うのだが、その因果関係には気付いていない様である。また石森金之助が金塊を何処か別の場所に隠そうとしているとの報告には、「何!金塊をな!良し。」と驚いた口調で答えている。どうやらかなり知能の低い連中の様である。
 金塊の移送計画を知った№2は、№1の「若様」に、「PX58号に、石森家を慎重に見張る様に御指令下さい。」と依頼する。金塊移送計画の件も言ってやった方がPX58号も任務を果たしやすいと思うのだが・・・。そして若様がその指令を怪電波で下すと、東京中のテレビの画像がまた乱れる。
 場面は変わって吉野博士亭では、博士とまぼろし探偵の正体である富士進が会話している。進の調査によると、ここ五日間、8時・12時・3時・夜の9時という決まった時間に画像が乱れたらしい。これにつき、「うーむ、ひょっとするとこれは・・・。進君、君は大変な所に目を付けたな。」と御大層な評価を博士は下している。なおその後の展開を視ると、実際にその発見は東京中で進ただ一人がしたものだったらしい事が判る・・・。どうやらこの作品世界の人々は、現実世界の人間と比較して知能が非常に低い様である。
 ところで、こうも不用意に定時連絡をしていたという事は、件の犯罪組織の側でもテレビ画像の乱れが自分達のせいだとは気付いていなかったのかもしれない。どこまでも低レベルな連中ばかりの世界である。
 やがて吉野博士の調査で、東京中のテレビが乱れたのは、「東京タワーのてっぺん近くに非常に強力な小型受信機が取り付けて」あったからだと判る。
 また電波の発信源も甲武信ヶ岳だと判明し、そこから犯罪組織の名前も「甲武信党」だと判る。地図を指し示しながら吉野博士が言うには、「甲斐、武蔵、信濃。つまり、山梨県東京都、そして長野県。この三つの都県の境に立っている、その山だ。」。我々の住む現実世界では甲武信ヶ岳は山梨・埼玉・長野の境にあり、また長野と東京も隣接していないのだが、作品世界ではそうなっているのだろう・・・。
 さて、警官隊約十名が甲武信ヶ岳を登り始める。先頭付近には警視庁勤務の富士警部(進の父)。やっぱりこの世界には埼玉県が存在しなかったのか・・・。
 警官隊は甲武信党に敗北。しかしまぼろし探偵が駆けつけ、逆転。甲武信党は降伏し、№1の正体が武田家の嫡流の武田ノブオ、№2の正体が「元武田の臣」小林多聞であると判明する。武田の臣の子孫ではなく元武田の臣という事は、この老人は数百歳という設定なのかもしれない。
 甲武信党は徳川に滅ぼされて以来、江戸時代は延々と軍資金を貯めていたらしい。そして維新の際に薩長に付こうとした矢先、石森トクゾウに軍資金である金塊を騙し取られたとの事である。今回の犯罪の動機は、金塊を取り返して山奥に理想の王国を築くためだったらしい。それにしても、幕府の様な強大な組織を相手に持久戦を採用したのは良いとして、一詐欺師から金塊を取り戻すのにも100年の歳月を費やすというのは、随分と暢気な集団である。
まぼろし探偵 完全復刻版 第1巻

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DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)

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