『まぼろし探偵』全話視聴計画(第19・20話)

第19話 海王星から来た少年
 この記事を書くために使用しているエムスリイエンタテインメントの盤では第19話とされているが、実際の撮影や放映は初期に行われているため、富士警部を演じる役者が天草四郎に戻っている。
 海王星から来た二人の少年が「風邪のワクチン」とやらを盗む。一人は死に、一人はまぼろし探偵に捕まる。
 捕らえられた少年は「これまで我々の海王星にはウィルス菌というものが無かったので流感は流行りませんでした。それがどうした訳か、ひょっとすると地球から打ち上げたロケットのせいかもしれません、ウィルス菌が発生しました。酷い流感が海王星に流行っています。」と語る。
 「ウィルス菌」とやらの正体は不明だが、ここは最大限好意的に解釈すれば「ウィルス・菌」の部分を早口で言ったという事に出来る。しかし地球から月にも届かない程度のロケットを何基か打ち上げただけで、即座に海王星でそんなものが発生したかもしれないという発言は突飛である。第8話の設定では、この作品世界でも人類はまだ第二宇宙速度を辛うじて出せる程度のロケットしか手にしておらず、例外的に吉野博士が通常の二倍の速度のロケットの設計図をやっと描いたばかりだった筈である。
 今回は、まぼろし探偵』にしては比較的リアリティのある作品だった。
第20話 金塊輸送車
 前回に引き続き、富士警部を演じるのは天草四郎
 第12話と同じく、また時価のある金塊の話である。時価三十億の金塊が発見される。長らくこの金塊を探してきたと称する大須賀の発言によると、これは軍がシンガポール仏印で入手して松代大本営近辺に埋めたものであるらしい。
 この大須賀が率いる大須賀金融を表看板にしたギャング団を富士進は調査していたが、相手に気付かれ、しかもたった一人の子分に腕力によって捕まってしまう。第9話の熊谷一味が策謀によって三人がかりでようやく進を拉致出来たのと比べ、かなり手際が良い。
 しかも進を捕まえた子分は、「こいつは警視庁の富士警部の息子ですぜ。」と大須賀に報告している。一介の構成員がここまで事情通であるというのは凄い。もしも進が怯えて父の名を使ってしまっていたのが真相だとしても、それはそれでやはりこの子分の優秀さを証明している。
 大須賀達は進を縛り上げて猿轡を噛ませた後、金塊を奪取するために出かける。第9話では簡単に縄抜けをした進だが、今回は身動きもままならない。こうした作業においても大須賀金融は熊谷一味より一枚上手である。
 進は捕らえられる際に万年筆を落としていた。それを通りすがりの吉野さくらが発見し、やがて縛られている進を発見するに至り、助ける。後の展開を見るに、この偶然がなければ大須賀は野心を成就させていた可能性が高い。
 進はまぼろし探偵に変装し、まぼろし号で大須賀の車を追い越し、道に丸太を転がしておいてから待ち伏せをする。計画通り大須賀達の車は丸太に足止めをされる。大須賀と同乗していた二人の子分が二人とも丸太の撤去作業に従事したのみならず、大須賀自身も綺麗な空気でも急に吸いたくなったのか、無用心に外に出て作業を眺める。まぼろし探偵はここで彼等を奇襲出来たはずなのだが、トランクに謎の小細工をしただけで去ってしまう。第18話とは異なり、確かに山の中で三人を一人で捕まえても護送等が面倒そうなので、この行動は一応許容出来る。
 さて、金塊輸送車は武装警官の乗った数台の車両に守られていたのだが、警官の一人は大須賀の部下が変装したものであった。彼は道中突然運転手に銃口を向けて人質にする。そして「じたばたすると皆殺しだぞ!」と、どう見てもこの人質作戦には似つかわしくない大仰な台詞を吐く。
 そこへ大須賀達三人が到着。ここまでは完全に大須賀の計画通りであったが、当然ながら直ぐにまぼろし探偵も到着。ここでまぼろし探偵は、特殊電波ピストルを珍しく二丁用いている。希少価値のある場面である。大須賀は虎の子の機関銃で反撃に出ようとするが、例の丸太を用いた工作の際に弾が抜き取られていたので失敗する。
 以上の経緯や手に入れかけたものの価値等から判断するに、大須賀金融は熊谷一味を上回る、現時点までで最強の敵組織であったという評価を下したい。