例外的な一本の注釈記事。このブログで頻繁に批判してきた三人衆について。

1.現状説明

 8月5日の記事で「九月から過去の低劣な記事を削除・非公開にする作業を開始する」という意味の宣言をした。

 こういう事を決めたのは、四年前に書いたマクベスの魔女批判の記事の内容が自分にはね返ってきたきたからである。

 過去に自分で書いた記事の話題につき、「今でも概ね首肯出来るが、こういう巨大な例外もあると気付いた」というときには、かつては独立した一本の注釈記事を書くことも多かった。具体例は、「前半満点、後半零点」という評価*1を与えていた『戦争責任論の盲点』につき、後半にも一定の努力賞を与えた記事である。

 しかしそういう作業をする時間がなくなってきたので、次第に三行程度の追記で済ますようになり、ついにそれでは済まないような問題記事(または問題段落)は、どんどん削除してしまおうという結論に至ったのである。

 そして予告していたこの作業を半月程実際にやってみると、「これは流石に全部削除するには惜しいが、かといって数行の説明でどうなるものではない」という話題が出てきた。

 そこで予定を一部修正して例外的に注釈記事を一本仕上げることにしたのである。

2.受けるかもしれない誤解

 このブログには、濤川栄太氏・辛淑玉氏・大川隆法氏の三人の著作への批判記事が多い。

 これにつき、「このgurenekoって奴は、右翼業界内では濤川、左翼業界内では辛、カルト業界内では大川が、それぞれ一番のクズだと思い込んでやがるんだな。オレ様はそれぞれの業界内でもっと酷い人材を知っているぜ」と誤解をしてマウントをとってくる読者がいたとしても、一向に構わないと思っていた。

 しかし「右翼業界内では濤川、左翼業界内では辛、カルト業界内では大川が、それぞれ一番のクズなのか。ボクが愛読しているのは別の著者の作品群だから、人生を大きく誤ることはあるまい」という誤解をする若者がもしもいたら大変だと気付いたので、注釈の様な記事を一本書くことにしたのである。

 タネを明かせば、この三人衆の内で濤川氏と辛氏の著作は、「本を批判的に読む態度」を伝えるための、単なる例として使わせてもらっただけである。

 昔住んでいた家の近所に売れ残った本をダンボール単位で売ってくれる古本屋があったので、そこから仕入れたダンボールの中にこの二人の著作が大量に詰まっていたのである。

 大川氏については多少事情が複雑で、今では「ひょっとしたら現存の日本の宗教家の中で一番危険かもしれない」と思い始めている*2。ただし、その著作を精力的に批判していた頃はそんな事を考えてはいなかった。幸福実現党の活動が問題だと思ったので、その総裁として批判の対象としていただけである。

 このブログで何度も主張してきたように、n流と(n+2)流は似ている事が多い。この三氏のようにクズ本の大量生産をしない執筆家が、必ずしも三氏より立派とは限らない。すなわち、最低限の誇りを理由にクズ本を書かない者もいれば、本当は書きたいのに馬鹿過ぎてクズ本すら書けない者もいるということだ。

 さらにいうと、三氏ともに私の知らない所で実は名著も書いてきたのかもしれず、また著作が全部クズでも講演等は一流なのかもしれない。

3.三氏を特別に嫌っている訳ではない証拠

 私が三氏を特別に嫌っている訳ではない証拠としては、著作をいきなり全否定するのではなく、批判するにしても特に悪い部分とそれほど悪くはない部分とを分けていることが挙げられよう。

 具体例としては、濤川氏の歴史教育論については、中高の教育では使えないものの小学校教育では一理あると認めた事がある。*3

 辛氏については、自分語りの部分が酷い本でも他人語りの部分は相当マシだと認めた事がある。*4

 大川氏については昔の作品群は最近のものより相当マシだと認めた事がある。*5

 さらには、「三氏の敵は(当座の)味方だ!」等という態度を採っていない事も証拠として挙げられよう。

 具体例としては、新しい歴史教科書をつくる会内部で濤川栄太氏と激しく対立した藤岡信勝氏に対しても、幸福実現党との関わり方について批判する記事を書いた事がある。

 大川隆法氏の悪行を告発する記事を多数書いてきた藤倉善郎氏に対しても、映画鑑賞能力の低さを批判する記事を書いた事がある。

 辛淑玉氏に批判的な有名人への批判は、書いたかもしれないが今すぐには思い出せないので、今すぐ軽く以下に書いてしまう。

 世界戦略研究所から2000年に瀬戸弘幸氏が出した『外国人犯罪』という書籍がある。この本は辛氏を何度も名指しで攻撃している。しかし「こういう犯罪があった」と著者が列挙している事例には、ほぼすべて情報源が付されていない。実に怪しい本であり、まるで辛氏の著作であると私には感じられた。

マクベス (光文社古典新訳文庫)

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丸山眞男集〈第6巻〉一九五三−一九五七

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