自社の栄光の歴史を知らぬ産経社員に喝!

 先に言っておくと、私は放送法第1条2項で不偏不党が義務付けられているテレビとは違い、新聞については偏向していても良いと思っている。偏向は「分業」でもあるからだ。保守政党や資本主義国の悪事は朝日新聞が積極的に暴いていくのが良いし、革新政党社会主義国の悪事は同じく産経新聞に任せると良い。下手に公正の大義に目覚められて限りある取材力を分散される方が偏向報道より余程怖ろしい。今回は産経新聞を批判するが、私は去年産経新聞の記者がウイグルで拘束された際(http://sankei.jp.msn.com/world/china/080810/chn0808102343020-n3.htm)に、「それでこそジャーナリスト!」と喝采を送った内の一人である。
 さて最近、衆議院選での自民党の大敗に際し、産経新聞の社員が「産経新聞が初めて下野」等とネット上で書き込みを行って問題視されたと聞く(http://www.asahi.com/national/update/0902/TKY200909020075.html)。
 これについては既にネット上で多くの人が問題視していたので、敢えて私が屋上屋を架す必要も無いと思い込んでいた。しかし発言の内「下野」の部分ばかり批判している人が多い様なので、遅蒔きながら少々別の観点を提示してみる事にした。
 私が問題にしたいのは「初めて」の部分である。
 非自民連立政権の成立が産経新聞の「下野」だと言うのなら、それは既に1993年の細川内閣の成立でも起きている事態である。仮にこの政権には媚びていたとしたのなら確かに今回が初めての下野となるのだろうが、当時の産経新聞テレビ朝日が非自民政権の成立を目指す報道を行っていたという所謂「椿事件」を告発して1994年度新聞協会賞を受賞したではないか。
 この栄光の歴史を忘れて「初めて下野」と書くとは、何たる愛社精神の欠如だろう。
 この社員は「民主党さんの思うとおりにはさせないぜ」とも書いたらしいが、ほんの十数年前にひょっとしたらフジテレビには迷惑かもしれない手法まで用いて権力側に立ち向かった先輩の偉業を学んでいない様では、その反骨精神も口先だけで終わる可能性が高そうである。