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具体的に名指しをしようとは思わないが、その内のある連絡先からは、かなり立腹させられる対応をされた。
「もっと日本語が上手でIQも高そうな人間を電話口に置け!」と思った反面、「そのための費用を公共料金や受信料に上乗せされたらたまらんなぁ。」とも思った。
私は、極普通に処理される筈だった事務がまともに行われずに遅滞すると、怒りと不安感とに苛まれる。
『世にも奇妙な物語』でも、この種の問題が入り口となっている作品の場合、タモリの「〜時、貴方は既に奇妙な世界の入り口に立っているのです。」系のいつもの言い回しが、異様に現実味を帯びて私に切迫してくる。
この私の性格は、面倒事を嫌って高雅の士とばかり交流してきた事の対価として醸成されたものなのであろう。あるいは指令が円滑に実行される『信長の野望』等のゲームをやり過ぎたせいでもあるかもしれない。
カフカの『城』や『審判』に描かれた世界を所詮はありふれた日常におけるノイズの集積だと思えるだけの図太さを得たいものだと思ってはいるのだが、やはりまだまだ精進が足りない。
そんな私だからこそ、この『ゾンビ・ナース』の恐怖を存分に味わえたのかもしれない。
主人公は、救急車に担ぎ込まれた恋人を探す。だが、最寄の病院でも警察でも期待していた様な対応はされない。そして窓口の人間は、一瞬だけ悪魔の様な顔に変化したりする。それが苛立った自分の心が見せる幻覚なのか、それとも現実であるのかは判らない。そうした中で、何を信じれば良いのかが曖昧になっていく。
本作品の原題は『ROOM6』なのだが、こうして物語を叙述していくと、カフカの世界だけでなく、チェーホフの『六号室』との共通点も多いと気付く。町中が実は結託して自分に対応している恐怖、故に自分の懸命の弁論や奔走が徒労であるかもしれないという恐怖、そしてこれは主人公ではなく恋人の側の話だが、病院から出られずに抹殺されてしまうという恐怖。
「条理」が機能しない現実は夢にも似た世界であり、『エルム街の悪夢』の第一作の様に、静かに幻想的な悪夢が日常を次第に侵食していくのである。
『ゾンビ・ナース』という邦題に惹かれた人の多くにとっては退屈極まりない作品であったろうし、こうした内容の作品が大好きという人が何の情報も無しに本作品を手に取るという事態も少なかったであろう。そのせいか、ネット上での評価はかなり低い。
そこで、邦題に惹かれてしかも内容にも大いに感動したこの酔狂な私が、世の風潮に逆らう自分の感想も一応表明してみた次第である。
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