「#寺カルチャー」

 「#寺カルチャー」というフォーラム(http://www.l.u-tokyo.ac.jp/CR/forum/forum11.html)に行ってきました。
 「#」マークが付いているのは、Twitterによる情報拡散を期待しての事のようです。そして講演の最中も、Twitterに書き込まれたフォーラムに関するコメントをリアルタイムで左右のテレビに映す仕組みになっていました。御陰で、質疑応答が無いのに何となく双方向性が確保されている様な感覚を味わえました。面白い試みではあると思いましたが、「荒らし」の攻撃がもしあった場合、対応に苦慮するのではないかとも思いました。
 なお、「研究報告」の中で映し出された画像の中には、「2010 せんとくん誕生」という間違いもあったのですが、私が見る限り、誰もそれへの批判をつぶやいていませんでした。
 「仏教側の新しい活動と日本文化の再評価の流れの中で、寺ガール等が登場して新たな形での仏教ブームが興りつつある」というのが、パネラー各位の大体の共通認識でした。仏教レジャーサークル「丸の内はんにゃ会」(http://www.m-hannya.com/home.html)代表の田中ひろみ氏によれば、今回基調講演を行った金子啓明氏が仕掛けた「国宝 阿修羅展」以降、「仏像が好き」という発言が普通に受け入れられる様になったとの事です。
 してみると、雑誌『Cobalt』1997年2月号の時点で仏像大好き少女「二条乃梨子」を登場させた『マリア様がみてる』は、かなり時代を先取りしていた事になります。
 パネラーの方々は概ね仲が良かったのですが、「寺」という「場」への立場はかなり違っていました。杉本恭子氏は、お坊さんの方に注目し、寺はお坊さんによって随分変わるハードウェアと見做していました。田中氏は、寺について直接語っていませんでしたが、仏像関連の本が多いので、おそらく施設重視の傾向があったと思われます。松本圭介氏は、人々を現実に存在する寺に呼び込むための工夫をしている一方で、バーチャル寺院の「虚空山彼岸寺」(http://www.higan.net/)を運営している人物なので、寺という場についての理念を語らせたら、かなり面白そうな話が聞けそうでした。渡辺裕氏は、「何でもあり」で無限に拡散してしまいそうな寺カルチャーを、一定の枠に食い止める場としての寺に注目していました。そして金子氏は、人間の視覚や光線に関する知識を使って博物館という「場」の価値を高める専門家です。
 この面々に、「場」に関する論争を行わせたら随分面白いものになるだろうし、宮司が居なくても神社という「場」だけで一種の完結したものを提供出来る神道との比較をすれば更に面白いとも思ったのですが、残念ながらディスカッションはそういった方向に進まないまま終わってしまいました。
 もう一つ残念だったのは、「寺カルチャー」に共感しない立場の分析が少なかった事です。「寺は観光地ではなく宗教施設だ」という立場を貫いている頑固な住職の話等は、私はしばしば耳にしているのですが、そうした人々と寺ガールとの抗争史等も語って欲しかったものです。渡辺氏は、自身の専門であるクラシックにおける、「のだめカンタービレ」によるファンの拡大を喜ぶ人と喜ばない人の衝突等にも触れていたので、この話を誰かが引き継いで欲しかったものです。

のだめカンタービレ全25巻 完結セット (講談社コミックスキス)

のだめカンタービレ全25巻 完結セット (講談社コミックスキス)