- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2009/01/09
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かつて弟の真中英雄を芹沢直人に殺され、しかも芹沢直人が正当防衛で無罪になった事に反発した真中友雄が、成瀬領と名を変え、合法的な復讐を遂行していく。改心して刑事として活躍していた芹沢直人は、その陰謀に立ち向かう。以上が大体の筋書きである。
以前一度観た事があったのだが、最近DVDを入手したので、再度観賞してみた。
- 出版社/メーカー: JVD
- 発売日: 2008/07/11
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成瀬領の復讐の対象は芹沢直人だけではなく、その関係者も大量に含まれている。標的達の写真は、謎の赤い部屋に貼られている。
今回第1話から視聴して気付いたのだが、この部屋には後の計画で使用する二体の熊のヌイグルミが置かれていた。中々芸が細かい。
なおこの部屋が赤いのは、江戸川乱歩の『赤い部屋』へのオマージュである可能性が高い。あれも天才による合法的な殺人というものをテーマにした、偉大な先行作品であるから。
最初の標的は、芹沢直人の無罪判決を引き出すのに尽力した熊田高広である。
予め熊田に護身用のナイフを送っておいた上で、芹沢家のパーティーに出席中の熊田に電話をかけで偽の情報を吹き込み、事務所に引き返させる。一方熊田に恨みを持つ林邦夫には、熊田が呼んでいるという偽の情報を流し、両者を鉢合わせさせる。林が暴れ始めると熊田はナイフを握り、その後両者がもみ合うと偶然にも熊田の方が死ぬ。林には正当防衛が成立する。
これが成瀬領の計画である。冷静に考えると実に拙い計画である。熊田が都合良くナイフで身を守ろうとするとは限らないし、ナイフを手にした熊田に対してなお林が挑むとは限らないし、両者がもみ合ったとしてもその際に熊田の方が死ぬとも限らない。全てが計画通りに行く確率は天文学的な低さである。
せめて事前に林に計画を伝えて口裏を合わせておけば、計画通りに行く可能性も高まっただろうし、突発的な事態が起きても計画通りの展開が密室で起きていたかの様な偽装をさせる事も可能だった筈だ。しかしそういった形跡も無さそうなのである。
しかも成瀬領は熊田を事務所に引き返させる際に、公衆電話と手袋を用いる等の工夫はしているものの、成瀬と名乗ってしまっている。熊田が周囲に何も話さずにパーティーの席を抜け出したから良かったが、もしも「かつての弟子の成瀬という男が事務所の危機を伝えてくれたから帰るよ。」等と言っていたら、この時点でかなり疑われていた筈である。
しかしリアリティーの無い事に、この計画は成功する。そして成瀬領は林の弁護を引き受け、芹沢直人にあてつけるかの様に、かつて芹沢直人を庇った熊田の如く、正当防衛による無罪を主張するのである。
- 作者: 江戸川乱歩
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1987/06/27
- メディア: 文庫
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登場人物の紹介が詳しくなされる。
まず芹沢直人の父である芹沢栄作だが、ホテル経営のみならず国会議員もやっている事が判明する。当初私は堤康次郎を露骨にモデルに据えた設定だと決め込んでいたのだが、意外にも原作の人物相関図(http://www.so-net.ne.jp/adtv/DevilEmpress/character.html)でもそうなっていた。
芹沢直人の高校時代からの友人である葛西均・宗田充・石本陽介も真中英雄殺しに何らかの関係を持っていた事と、それ故に成瀬領に命を狙われている事が判明する。
この四人組、不倫(それも離婚を前提としている様には見えない)はするわ、仲間内でも些細な理由で乱闘を始めるわ、事情聴取のために留置場の鍵を奪って牢内に乱入するわという、外道集団である。宗田に対する芹沢栄作の「クズはいつまで経ってもクズ」という評価は、他の連中にもほぼ当て嵌まる。
今回の標的はその内の一人である石本。自分の夢の実現のために、激しい借金の取り立てを行っていた男である。
まず石本の取り立ての脅威を受け続けていた新谷多恵には護身用の催涙ガス銃を送りつけておく。また多恵の娘である新谷ソラには熊のヌイグルミを直接与え、仲良くなっておく。
そしてある日、新谷ソラを密かに遊園地に誘う一方、当日石本の事務所には同じ熊のヌイグルミが届くように手配しておく。
娘を石本に攫われたと思い込んだ新谷多恵は、護身用の催涙ガス銃を持って事務所に乗り込む。そこで争いになり、ガスが発射される。普通はこれで死ぬ事はあり得ないが、忙しくて呼吸器官の疾患を治療していなかった石本は死んでしまう。
前回の熊田殺し程無茶ではないものの、今回もかなり成功確率の低い計画が偶然成功してしまったと言える。
それでも敢えて作品を擁護する設定を考えてみると、実は成瀬領には標的を100%殺す心算は無く、標的がもしも直ぐにナイフや暴力に頼ったりはしない人物であれば生き延びられる様な計画を立てていたのかもしれない。
もしもそうであるならば、『SAW』シリーズの影響も考えられる。
その他、個人的に残念だったのは、成瀬領が日本語訳された文庫版の『ファウスト』を読んでいる場面である。日本語の文庫ではどうにも安っぽい。出来れば洋書を、それが無理でもせめてハードカバーにして欲しかった。
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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- 作者: ゲーテ,高橋義孝
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- 作者: Johann Wolfgang von Goethe
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- 作者: ゲーテ,Goethes,小西悟
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今までの事件では、雨野真実(あまのまこと)という偽名の人物から芹沢直人と標的にタロットカードが送られてきていた。芹沢直人は真中英雄の旧友であった山野圭太が復讐のために雨野を名乗っていると思い込むのだが、捜査は難航する。
やがてヒントにより「amanomakoto」を並び替えると「manakatomoo」になる事に気付くのだが、真中英雄の兄である真中友雄も死んでいる事が判明し、やはり行き詰る。
それにしても思うのだが、折角「やまの」という苗字のキャラクターを作ったのだから、彼が「あまの」だと思い込まれる切っ掛けも、いっそ名前を原因にしたならば面白かったのではあるまいか?例えば「山野信」等という姓名にしておけば、そこから誤誘導出来そうである。
なお、山野犯人説は満更的外れでもなく、彼は実は成瀬領の協力者として新谷ソラを遊園地に連れて行く作業に従事していた。ソラが山野との約束を守ったためこの件は警察にばれなかったのだが、ソラが喋っていたら計画に綻びが出る所であった。
さて、今回の標的は池畑隆宏。かつて芹沢直人の真中英雄殺害を正当防衛として擁護する記事を書いた記者である。彼一人を殺すのに三話も費やしているので、少々中弛みの感がある。
池畑は現在では芹沢栄作と対立しているので、成瀬領にとってはそれなりに活用出来た筈の駒なのだが、この時点で殺してしまっている。しかも当初は池畑の方から接近してきたというのに、懐柔を怠ったため敵意を持たれてしまい、自分がかつて真中友雄であり、友人であった成瀬領の死後にその戸籍を乗っ取った事まで、丹念な取材によって見抜かれてしまう。
最終的には、犯罪組織のボスである大隈和真に大金を与え、大隅の部下をして池畑を脆い足場の場所に追い込む事で、転落事故に見せかけて殺す事に成功する。
しかし池畑は、死の前にいざという時のための報復の準備を仕掛けていた。そしてその内の一つを成瀬領は見逃してしまう。これについては次回明らかになる。
今回の成瀬領の数々の失敗は、頭の足りない若造を首尾良く殺した事による慢心が原因であろう。それなりに知能の高い大人を見くびると、後が怖いのである。
第7・8・9話
池畑隆宏は死の前に、現在の成瀬領が偽物である事を示唆する内容のCDを、成瀬領の戸籍上の姉である成瀬真紀子に送っていた。しかし成瀬領がこれまで実の弟の様に熱心に介護を続けていたため、成瀬真紀子はその証拠を隠滅する。
こうした成瀬真紀子の行為やヒロインの咲田しおり等から受ける愛情により、成瀬領は徐々に人間性を取り戻し、復讐計画の続行にも躊躇をし始める。
しかしそれを見抜いた山野圭太は、指示を待たずして強引に次の計画を発動してしまう。当初は単なる助手であった山野が、ここに来て急に重要人物になってくる。
オープニングの映像では、主要登場人物には原則として画面内に一人で映る場面があるのだが、山野と石本陽介だけは二人連れで登場し、しかも山野は後方に控えている。言わば制作陣から雑魚の烙印を押されていた人物なのだが、終盤では何らかの事情で急に台頭する。
彼と対極的に没落するのが高塚薫である。当初は芹沢直人の暴走を掣肘する大学出の切れ者の同僚として登場していた筈なのだが、第6話では百戦錬磨の大隈和真の前に手も足も出ず鼻で笑われる。今回は重要な発想の転換を思いつくという頭脳派ならではの役割すら肉体派の芹沢直人に奪われてしまい、単なる作業員と化していた。
さて、今回の標的は宗田充である。芹沢直人の兄である芹沢典良の妻の芹沢麻里は、葛西均と不倫の関係にあった。この情報を宗田に教える事で、宗田をして葛西達を脅迫させ、これにより同士討ちを狙うというものである。
妻の不倫が公になる事を怖れた芹沢典良は大隅に宗田を襲わせる。現場で指揮を執っていた葛西は情に絆されて大隅達を帰してしまい、宗田の命だけは助ける。しかし裏社会のプロである大隅達が大人しく帰ったのにはちゃんと理由があった。最終的には芹沢典良が宗田の生死の確認に来て、止めを刺す。
この時、芹沢典良が葛西の愛用のペンを現場に落としてしまったため、折角宗田を許した筈だった葛西は殺人事件の容疑者として逮捕されてしまう。宗田の死亡推定時刻における葛西のアリバイを証明出来るのは不倫相手の芹沢麻里だけだったので、葛西は彼女を庇い敢えてアリバイを主張しない。
当初は単なる不倫だった葛西の恋愛だが、ここに至って純愛の様相を呈してくる。視聴者の中には、「こいつだけはもう許してやっても良いかな?」と同情を持つ者も増えてきたと思われる。こうした傾向もまた、次回以降で重要になってくるのである。
第10・11話
芹沢麻里が葛西均のアリバイを証言したため、葛西の殺人容疑は晴れ、暴行だけが問題となる。
妻に裏切られた芹沢典良は真犯人として逮捕され、失意の中で自殺する。
かつて長男に先立たれた真中好美が直後に心臓疾患で死んだのと同じく、芹沢栄作も長男の死によって心臓発作で死ぬ。
真中英雄殺害の真相が、正当防衛ではなかったものの不慮の事故だった事を知った成瀬領は、復讐心をほとんど失ってしまい、葛西の保釈金を用立てる。
これを怒った山野圭太は成瀬領を刺してしまい、半死半生の状態にしてしまう。その後、帰宅中の葛西を刺殺するが、直後におそらくは芹沢直人と思われる警察官によって射殺される。
最後に成瀬領と芹沢直人は、真中英雄が死んだスクラップ置き場で再開する。成瀬領は自殺しようとするが、それを止めようとした芹沢直人を誤って撃ち殺してしまう。その後、彼もまた山野に刺された傷が原因で死ぬ。
終盤はとにかく急展開で、主要登場人物が次々と死んでいく。実写ながら「皆殺しの富野」を思い起こさせられてしまった。
後から冷静に話の内容を思い出すと、大企業のトップにして国会議員でもある男が心臓発作に襲われてもやたらと発見が遅れたり、半狂乱の山野が人混みの中で標的を偶然発見出来て背後から刺す事に成功したり、その直後に射殺された筈の山野が報道では既に「容疑者」呼ばわりされていたりと、おかしな点も多いのだが、実際に手に汗握って視聴していると余りそうした御都合主義も気にならない。
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