『魔法少女まどか☆マギカ』全話視聴計画(第7〜9話)

第7話 「本当の気持ちと向き合えますか?」
 美樹さやかは一度は自分の魂と肉体が分離した状態を悔やむが、佐倉杏子との対話等を通じてふっきれる。そして杏子の対極として他人本位の戦いをする魔法少女になる事を目指す。
 今まで単なる悪役に見えていた杏子だが、かつて他人本位の願いを叶えようとして失敗した過去への反省から、敢えて自己本位に徹する努力をしていた事が明らかになる。自己本位なら全ての結果は自己責任として自己完結出来るというのだ。
 ただしその手法を表明・唱道しているあたり、真の意味での自己完結とは言えないだろう。杏子は人が彼女の様な立場に近付く事が正しい事だと思っているので、言わば「道徳としての自己本位」である。
第8話 「あたしって、ほんとバカ」
 他人本位という発想は、実践面のみならず、哲学的にもかなり難しい立場である。何故なら他人の役に立ちたいと欲しているのは自分なのだから。
 美樹さやかも報酬を敢えて無視する等という過激な方針を採用したため、ソウルジェムの浄化が追い付かず、限界が近付く。このため何となく性格が悪くなって鹿目まどかを傷つけてしまう。自分が救った想い人の上条恭介と親友の志筑仁美の仲が深まる事も呪ってしまう。
 最後には自分が必死で守っていた人間の黒い側面を許せなくなってしまう。そして臨界を迎え、自分が魔女になってしまう。ここら辺は『デビルマン』の影響が見て取れる。
 ラストのキュゥべえの台詞によると、魔法少女とはそもそもやがて魔女になる存在のようである。
 またキュゥべえの本名が「インキュベーター」(=「孵卵器」)である事も明らかになる。臨界を迎えたさやかのソウルジェムが砕けて魔女となった事を考えるに、卵に当たるのがこのソウルジェムなのだろう。そしておそらくこの命名の背後には、夢を餌にして少女を孕ませる「インキュバス」も意識されていると思われる。
 わざわざやがて魔女となる魔法少女を増やし続けている理由は、まだ謎である。
 まどかについて、もしも魔法少女になるとこの宇宙の法則すら変えられる才能だという事が語られる。
 暁美ほむらは、まどかが魔法少女になるのを熱心に止めようとする。彼女は別の時間軸から来たらしい。してみると第1話の夢は夢ではなかったのかもしれない。
デビルマン 全5巻セット 講談社漫画文庫

デビルマン 全5巻セット 講談社漫画文庫

第9話 「そんなの、あたしが許さない」
 キュゥべえが魔女を作り続ける理由は、宇宙の寿命を延ばすためだったと判明する。キュゥべえの種族は、「感情」を熱力学の第二法則から超越したエネルギー源として使用する手法を見出したものの、自分達には感情が無かったので、人類を利用しているらしい。魔法少女が魔女になる瞬間、膨大なエネルギーを回収出来るとの事である。
 だがここで私は不思議に思ってしまった。「手段」を考えるのが「理性」であり、「目的」を作り出すのが「感情」であるとすれば、やはりキュゥべえ達にも感情はあるのではないか?宇宙の寿命を延ばそうとしたという事は、「宇宙の寿命を延ばしたい」という感情を持っているか、宇宙の寿命を延ばす事で達成したい何らかの目的を作り出す感情を持っているかの、どちらかなのではなかろうか?
 佐倉杏子は魔女になった美樹さやかを救おうとして失敗し、自爆風の技によってさやかごと消え去る。さやかを救える可能性が零に近い事は本人も承知していたので、どちらかというと予定していた通りの結果だったのだろう。戦いの中で死ねば魔女にならずに済み、キュゥべえにエネルギーとして利用されずに済むからである。
 ただしキュゥべえとしては、今回の杏子の死に関しては寧ろ御満悦であった。ワルプルギスの夜に立ち向かえる魔法少女が減れば、鹿目まどか魔法少女になる決意をする可能性が高いからである。
 なお数学の授業では、何とフィボナッチ数列が登場していた。こんなに進度が速いと、第1話で暁美ほむらが現実世界の高校一年生程度の問題をスラスラ解いただけで騒がれた場面との整合がつけ難い。