『忘却の旋律』全話視聴計画(第21〜23話)

第21話 圏外圏
 子供オオトカゲ艦内でチャイルドどらごんが「所詮この世は夢幻。だったら面白い夢を見た方が勝ちだ。ようこそ、迷宮へ。」と叫ぶ。これはココの「生きる阿呆に死ぬ阿呆、同じ阿呆なら生きなきゃ損損。」に酷似した論法である。
 モンスターユニオンはミトラノームを内側から破壊するため、ボッカ達はミトラノームのEPRサーキットを作動させて決して破壊出来ない状態にするため、互いにミトラノームを目指す。
 両者はまずミトラノームから離れた宙域で戦闘を開始する。マホロバは武装が全て取り外されていたので、ボッカ達は真空中でも戦闘出来る状態になるためにアイバーマシンと「バイオコンツェルト」という合体を行う。
 面白いのは、このバイオコンツェルトに必要なジェルの容器である。以下の写真を御覧頂きたい。

 「TVCMでおなじみ」と書かれているので、これはまだメロスの戦士がの活動が人類の大多数に支持されていた、二十世紀戦争の頃に生産されたものと思われる。
 また生産国が「カンボジア」になっている点に注意したい。
 革命家であるメロスの戦士がモンスターキングを殺すと、モンスターは却って暴走し、またミトラノームの本領を発揮させるか忘却の旋律を解放すれば一気にモンスターを滅ぼせるが、そうすると人類は猿人に退化してしまう。それがこれまでに明かされた設定である。
 ここで「カンボジア」という国名を敢えて出したのは、現実世界において革命が却って世を乱した例を、視聴者に思い起こさせようとしたためなのかもしれない。
 この戦いで、ディスカウントうりぼうが遠音に遺恨を持っている事が匂わされる。
 宇宙空間での戦いは、互いに相手を撃破出来ないまま終わる。子供オオトカゲはミトラノームとのドッキングを果たす。
第22話 ミトラノーム
 マホロバもミトラノームとのドッキングを果たし、戦いの場はミトラノーム内部へと移行する。
 ミトラノーム内部では既に、現地で目覚めていたユニコーンシリーズのモノケロス4号とガードロボット達が戦いを繰り広げていたため、戦いは四つ巴の様相となる。
 「宇宙の海」の冷気に心惹かれるチャイルドどらごんと、「あの大地の輝きは、宇宙の闇より深いよね。」と地球の美に心惹かれるココとが、対照的に描かれる。モンスターの支配によって回復した環境が地球の美を成り立たせている事を考え合わせると、中々に皮肉な構造である。
 また「もし言葉を喋れる猫が居たら、それは猫の形をした人間て事よ。」と言ってユニコーンシリーズを人間扱いするココと、アルコトナイコトインコが「インコの癖に自分の言葉を喋れる」事を不思議に思い続けるフライングばにーとが、対比的に描かれる。スカイブルーと愛し合う遠音と、それを「気持ち悪い」というディスカウントうりぼうも対比的に描かれる。
 これは今まで散々描いてきた通り、パーソン論を奉じるメロスの戦士と奉じないモンスターユニオンとの対比である。
 因みにディスカウントうりぼうは、モンスターに対しては「モンスター様」と敬称を付けて呼称している。彼女にとって、「生物学的に人間でないもの」は、人間以下の何かか人間以上の何かのどちらか一方でなければ気が済まないのであろう。
 「人格が有るか無いか」の線引きも、「生物学的に人間であるか否か?」の線引きも、突き詰めてしまえば全集合に対する所詮恣意的な線引きである。これを戯画的に告発するのが、第三勢力であるモノケロス4号である。何と彼は、「俺か俺でないものか」で敵と味方とを分けているのである。終盤にこんなに面白い新キャラクターを出してまでこの問題に対する考察を深めさせようとしてくるとは、実に侮れない物語である。
 ボッカはチャイルドどらごんを一度は撃退するが、その後チャイルドどらごんは「パルセーターモジュール」という光り輝く謎の小物を発見し、この時点で勝ちを確信する。
 遠音とディスカウントうりぼうは戦いを続ける。やや遠音が優勢。
 ココはモノケロス4号を追い駆けるが、中々追い付けない。
 多くのガードロボットが一連の戦いで倒れ、また分散したためか、ミトラノームの武装の大半を受け持つ部分「ヴィンターライゼ」へのガードが甘くなる。その隙を付いてモノケロス4号はヴィンターライゼに侵入し、ミトラノームから切り離す。更には独立したヴィンターライゼと合体して「新しい俺」になる。
 ニッキは何とかEPRサーキットを作動させるが、ミトラノームが無敵になるまであと20分かかるらしい。
第23話 世界を貫く矢のように
 ヴィンターライゼによミトラノーム攻撃が始まる。もしも攻撃を受け過ぎるとEPRサーキットが機能しなくなるので、あと15分間を守り抜くために、ボッカ達は再びバイオコンツェルトをして宇宙に飛び出す。
 ヴィンターライゼはボッカ達によって一度は撃退されるが、自己修復を始める。その時、子供オオトカゲによるマホロバ攻撃が始まったため、ボッカ達にはヴィンターライゼを破壊する余裕は無かった。
 フライングばにーが遠隔操作するロボット怪獣「マイティバニー」を倒して気勢を上げるボッカ達であったが、その直後、地上ではモンスターユニオンの攻撃によって少年メロス同盟が全滅してしまい、ボッカ達は一気に意気消沈してしまう。
 また前回手に入れたパルセーターモジュールの力によって、チャイルドどらごんのロボット怪獣「ドーラ・グ」は、最強のノイズキャノンを発射する。グローバルノイズキャノンがこれまではほとんど通用しなかったエランヴィタールすら機能を停止し、スカイブルーとヒカリは当然ながら完全に戦闘を継続出来なくなる。
 そこへ更に、修復を終えたヴィンターライゼが襲撃を仕掛けてくる。
 ボッカはそれでも戦い続ける。省略された場面が多いが、おそらくはヴィンターライゼにも勝利する。
 そしてボッカとエランヴィタール以外のメンバーが乗るマホロバは、子供オオトカゲに特攻し、大爆発をする。
 モンスターユニオンの幹部はこれで全滅し、メロスの戦士もおそらくはもうボッカと黒船の二人だけになってしまった。松本零士作品へのオマージュが多かったこの圏外圏編だが、この流れは「皆殺しのトミノ」に近い。
 ボッカは皆を助けようとするが、突如活動を開始したエランヴィタールは、ボッカだけを連れて強制的に大気圏に突入してしまう。