韓国経済関連の論争の不可思議が二つ

 「韓国経済はもうすぐ危機に陥る」という言説が最近まであった。主に経済評論家の三橋貴明氏が声高に唱えていたものであり、インターネット上ではこの説を支持する者としない者とが激しい論戦を繰り広げていた。
 私は経済に疎いので観戦するだけであったが、決着した場合の双方の反応をずっと楽しみにしていた。
 そして、アベノミクスが始まって以来、韓国経済の調子が非常に悪くなった。私はかつての論者達の反応を求めてネット上を彷徨った。
 まず、「三橋先生を信じて、韓国経済が崩壊すると儲かるスキームを組み続けていた御陰で大儲けしたよ!」だの「アンチ三橋を貫いて韓国株を買い過ぎた結果がこのザマだ!」だのといった反応には出会えなかった。口が幾ら熱くなっても身銭までは賭けない慎重派が多かったのであろう。ここまでは想定の範囲内であった。
 ところが、韓国経済の危機を寿いでいる嫌韓の人々が集まる掲示板等を見ても、かつて韓国経済の不敗神話を説いていた論敵までをも馬鹿にするという姿勢がほとんど見られなかった。これは想定の範囲外であった。敗者が口を噤むのは納得がいくにしても、勝者が勝鬨を上げないというのは非常に不可思議であった。
 一応、「経済危機の予言から的中までの日数が長かったので、論争は実質的には引き分けだと思っているのだろうか?」という仮説も考慮してみた。だが、これは私の偏見かもしれないが、威勢良く他国を蔑んでいる人達の大半がそこまで謙虚というのも、どうにも納得がいかなかったのである。
 そういう訳で、これが韓国経済関連の日本の論争に関する私にとっての不可思議の第一である。
 これとは別個に、韓国経済と日本の嫌韓現象の相関関係についての論争もあった。嫌韓現象の主要な原因を韓国経済の好調さへの妬みだとする者と、他に原因を求める者との間での論争である。
 これについては、私は明白に後者の立場であった。「経済的に急成長している地域は他に幾らでもある。その中で韓国だけが妬まれる訳が無い。嫌韓が大昔と比べて増えたのは単に大昔より韓国に関する情報が多く伝わっているからであり、同様の理由で大昔より親韓も増えたではないか。今後更に情報が増える事で、韓国の長所も短所も知りぬいた日本人が増え、今度は却って極端な親韓も嫌韓も減っていくだろう。」これが私の立場であった(一例→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20080324/1206336378)。
 しかし最近になって、確かに少なくとも見かけ上の相関関係が見られた。アベノミクスが始まって日本経済の勃興と韓国経済の停滞が始まった辺りから、「在日特権を許さない市民の会」等の嫌韓的団体への官民の態度は硬化し、反対運動が盛り上がったり、運動から逮捕者が続出したりしたのである。
 私は当初、「ほら見ろ、やはり韓国経済の興廃次第で日本人の対韓感情は斯くも変わるのだ!」と主張する人が続出すると考えていた。
 そして私はそうした言論を見掛けたら、「嫌韓団体への圧力が強まったのは、彼等のプラカードの内容が段々過激になってきたからに過ぎない。」と反論しようと手薬煉引いて待ち構えていた。
 ところが、韓国経済と日本の嫌韓現象の強さについて実際に見た目の相関が見られるというこの絶好の機会において、何故か「嫌韓は韓国経済への嫉妬だ」説論者が雲散霧消してしまったのである。
 これが韓国経済関連の日本の論争に関する私にとっての不可思議の第二である。

本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖

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