加納京太著『アトランチスの謎』(一二三書房・2013)も紹介する。

アトランチスの謎 復活のザヴィーラ(桜ノ杜ぶんこ)

アトランチスの謎 復活のザヴィーラ(桜ノ杜ぶんこ)

 前回(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20140504/1399205865)紹介したおかず著『いっき』(一二三書房・2013)に引き続き、当初は本命であった『アトランチスの謎』の小説版も読んでみた。
 今回も不安がかなりあった。最大の不安は副題が「復活のザヴィーラ」である事に起因していた。「ゲームの内容の続きであるならば、それは本当の意味でゲームの「小説化」ではないのではなかろうか?だからこの作品は、単に『アトランチスの謎』の知名度を利用して金儲けしたいだけの理由で生み出されたのではあるまいか?」そんな不安に苛まれつつページをめくっていった。
 だが今回も、物語の王道はしっかり踏まえられた上で話が構成されていた上に、やはり原作ゲームの不条理に思えた設定に対して、しっかりとした説明がなされていたのである。
 私は大昔に原作ゲームを楽しんだ際に、折角救出したのに一緒に脱出しようとしなかった師匠「権兵衛」の行動が不可解で仕方がなかった。そしてそもそも、スタート時に気球を乗り捨てたせいでザヴィーラを倒したのにどう頑張ってもアトランチスから抜け出せなかった主人公「ウィン」の立場も不可解に思った。だが「制作時間と容量の関係からエンディングを作れず、こうするしかなかったのだろう。」という大人ぶった解釈をして、長年考察を怠ってきた。
 だがこの作品は、そうした問題点を完全に解決する設定を全て用意してくれたのである。そして全てを読み終えた後、私の心配の種であったゲームの続編であるという本作の時代設定もまた、エンディングが収録されていなかった原作を最大限尊重する態度であったと気付いたのである。
 それどころか本作は、何度か死んでもそのゾーンの最初からやり直せたり、謎のアイテムを取ったら雲の上を歩けたりという、良く良く冷静に考えてみれば不可思議な現象にも、見事な説明を与えてくれた。そしてそれら全ての謎を集約し、謎の説明が決して後付けの強引なものとは思えなくなる一つの点として、あの有名な所謂「裏ファイナルゾーン」を持ってきている所が何よりも素晴らしかった。これは二次創作の鑑である。
 私はアドベンチャーゲームの主人公が死んでも生き返る事について、大概は「ゲームだから」で済ませてきた。たまに考察しても、せいぜい「夢だ!」とか「イメージトレーニングだ!」とか「有りえた可能性の一つである並行世界の事件だ!」とかで済ませてきた(一例→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20090924/1253720469)。
 だが私のこうした説では、砦を出発した時点ではスーパーマリオだった人物が死んだ際に、その砦からノーマルマリオとして再出発するという不可解な現象を説明するのが難しくなってしまう。『アトランチスの謎』でも、死んで再スタートした際にはしばしばアイテムを失う。そう考えると、やはりアドベンチャーゲームの操作対象の死と再生は、現実と見做せるものなら原則として見做した方が良い事になる。
 そういう観点からも、ウィンがスタート時に七機あった事を物語の内側に取り込んだ本作は、非常に優れていると言える。
いっき ーLEGEND OF TAKEYARI MASTERー(桜ノ杜ぶんこ) (桜の杜ぶんこ)

いっき ーLEGEND OF TAKEYARI MASTERー(桜ノ杜ぶんこ) (桜の杜ぶんこ)

メモリアル☆シリーズSUNSOFT Vol.2

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