おかず著『いっき』(一二三書房・2013)は名作!

いっき ーLEGEND OF TAKEYARI MASTERー(桜ノ杜ぶんこ) (桜の杜ぶんこ)

いっき ーLEGEND OF TAKEYARI MASTERー(桜ノ杜ぶんこ) (桜の杜ぶんこ)

 伝説のゲーム『いっき』が、四半世紀以上の時を経て小説化されたと聞き、購入してみた。
 原作は「クソゲー」の元祖と一般にされており、著者の「おかず」氏についても失礼ながら全く名を聞いた事がなかったので、どうせ下らない作品だろうと思っていた。
 それでも購入した理由は二つあった。第一は余興である。第二は、『いっき』が私の愛したゲーム『アトランチスの謎』と多少の繋がりを持っているからである。
 ところが実際に読んでみて驚いた。
 まず、単体として十分に面白い時代小説に仕上がっていたのである。自分の生き方に悩む主人公は、農村という狭い社会で苦しみ、初めは功名心を動機にして積極的な行動を起こし、強敵に敗北した後は人生の先達の指導の下で人格的成長を遂げ、ついに高次の動機に基いて偉業を達成するのである。
 そして、突如何の脈絡も無く登場した仙人がおにぎりを投げるボーナスステージ等の原作における各種の不条理な設定が、この重厚な物語の中に無理の無い形で嵌め込まれていたのである。
 これは天才の所業である。「おかず」氏は、実は他のジャンルで既に功名を遂げている大御所の覆面なのではあるまいか、とも考えた。
いっき

いっき

アトランチスの謎

アトランチスの謎