- 作者: あかほりさとる,奥田万つ里
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 1999/12
- メディア: 文庫
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まず、山崎真之介とルシファーの関係が後天的な結び付きであった点を、評価しておきたい。
この世界の島原の乱はルシファーが起こしたものであり、宣教師達は寧ろ幕府の側についていた。倒されたルシファーをキリスト教嫌いの南光坊天海が対キリスト教用の鎮守として再利用した後、山崎がそれを体内に取り込んでいたのである。
この設定だと、ゲーム第二作で再登場した山崎が非常に弱かった上に変身も出来なかった事を、完全に説明出来る。
また「黄昏の三騎士」を登場させなかった事を評価したい。
彼等はゲームの都合上出さざるを得なかった連中であり、主人公達との精神的な交流も無かったので、小説版で無理に出す必要は無いのである。ゲームと小説の媒体の差を深く理解した上での英断であると思われる。
一方、批判しておきたいのは、『巻の二』の225ページに登場した徳川家光の側室「おえん」の存在である。
これは重要な伏線である事が匂わされていたのに、その後は全く物語に絡んでこなかったのである。
以下、設定に関して気付いた事を書いておく。
『巻の一』48ページ、日露戦争においてポーツマス会議が一度決裂し、日本軍はその後の「長春大会戦」で苦戦を強いられていた。この戦いはロシア軍の勝利に終わったものの、日本軍が上手に撤退したので、結局その後は講和が成立したとの事である。
講和の具体的内容は明かされなかったが、史実よりも日本側に不利なのは当然であろう。
そう思って読み進めると、『巻の二』44ページの記述では朝鮮・台湾がタイと並列的な異国として扱われていた。
『サクラ大戦 巴里前夜』でも、ヨーロッパの国々が第一次世界大戦で疲弊して植民地を全て失ったという設定が書かれていた(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20130607/1370532141)。おそらく本シリーズの世界は、「植民地の無い綺麗な1920年代」なのであろう。
日露戦争で勝利出来ず、大戦景気の利益も降魔戦争で消えてしまったのであるから、この世界の日本の相対的地位はかなり低そうである。『サクラ大戦V』でマイケル=サニーサイドが日本について「いつかアメリカの州になれるといいのにね。」みたいな事を言っていたが、これは無知や皮肉に由来していたのではなかったのかもしれない。
『巻の二』41ページ、大神一郎には姉の他に二人の弟がいるという設定が書かれていた。
『巻の三』44ページ、藤枝あやめが帝国華撃団は五つの部隊に分かれていると語っている。その中には「極地戦闘部隊・雪組」というものもある。「極地」は「局地」の間違いである可能性が高いが、この雪組の姿は一度も見た事が無いので、ひょっとしたら本当に北極や南極で何者かと戦い続けているのかもしれない。「雪」という文字も極地を想起させる。
なお、ここで紹介された五つの部隊の中には「奏組」が存在しなかった。薔薇組と同じくこの時点では結成前だったのか、あやめですら知らなかったのか、それとも知っていたものの秘密にし続けたかったのかは、謎である。
『巻の三』72ページ、大神の士官候補生だった期間が四年とされている。史実における当時の日本海軍の兵学校は、まだ三年制であった筈である。意図的に改変したのか、仮に意図的であったとしてその動機は何か、謎である。海軍兵学校第50期卒業生やその遺族からの抗議を躱すために、フィクションの度合いを高めたのだろうか?
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