『サクラ大戦 奏組』全4巻を読破。あと時代設定研究を少々。(追記あり)

サクラ大戦奏組 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)

サクラ大戦奏組 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)

サクラ大戦奏組 2 (花とゆめCOMICSスペシャル)

サクラ大戦奏組 2 (花とゆめCOMICSスペシャル)

サクラ大戦奏組 3 (花とゆめCOMICSスペシャル)

サクラ大戦奏組 3 (花とゆめCOMICSスペシャル)

 漫画『サクラ大戦 奏組』全4巻を読んだ。
 奏組とは、「帝国歌劇団」においては音楽を担当し、「帝国華撃団」においては花組の手を煩わせるまでもない雑魚を倒している部隊である。主人公である雅音子は花組に入るのを夢見ていたが、この部隊の隊長に任命される。
 途中から外国から来た謎の組織の末端と戦う話になったのだが、事件が解決する前に漫画は終わってしまった。残念である。
 気になった点を幾つか紹介する。
 1巻34ページ、「帝都高速度交通営団」の看板が新字体であったのが残念。
 1巻164ページ、雅が故郷にいた頃からラジオ体操をやっていたという設定が語られる。史実においてラジオ体操が始まったのは1928年11月であるが、2巻になっても1927年春に引退する米田一基が現役である。よってこの世界のラジオ体操は史実より早く始まった事が判る。
 3巻67ページでは、スペイン国旗に記された国章の盾の部分が、カスティーリヤ王国の紋章とレオン王国の紋章のみを組み合わせた単純なデザインになっていた。絵として省略したのか、それともこの世界のスペインがアラゴンナバラグラナダといった諸国を組み込まなかったのかは、謎である。
 さてこの漫画に関する最大の謎は、物語の舞台が何年の何月なのかほとんど判らない事である。主人公である雅の入隊時期も不明、物語の進度も不明、公式サイトの「キャラクター紹介」(http://sakura-taisen.com/kanade/chara/neko/)のキャラクター達の「年齢」がいつの時点の年齢なのかも不明である。
 前述した通り、第七話の時点で米田がまだ支配人をやっていた事だけは確定しているのだが、それ以外の情報は決定打に欠ける。
 まず1巻7ページ、入隊前の雅が花組を思い浮かべる場面では、花組のメンバーの影が八体並んでいる。この時点で1925年5月以降の話である事は確定しているかに思える。
 しかし、これは雅の妄想図かもしれないし、ゲーム化されていない時期に一時的に花組の人員数が増えていた可能性も否定出来ない。また完結に至るまで、1925年入隊のソレッタ=織姫とレニ=ミルヒシュトラーセの名前や姿は一切登場しないのである。神崎すみれやマリア=タチバナの名は登場し、真宮寺さくらやイリス=シャトーブリアンに至っては姿まで登場しているのに、である。
 1巻105ページ、雅は高村椿を見て「同い年くらいの女の子だ…」と感じている。そして漫画の部分でその日の夜が描かれた117ページの左側に、雅のプロフィールとして年齢が16歳である事が明かされている。これである程度時期を推測出来そうにも思える。
 しかしこれも結局は雅がそう思っただけの事である。そして初代『サクラ大戦』が始まった1923年春には椿は15歳。米田が引退する1927年春には椿は19歳。しかも、この期間において彼女の容姿はほとんど変化していない。どの時期においても、雅が「同い年くらいの女の子だ…」と思い込んでも不思議ではない。よって、やはり決定打とは言えない。
 1巻107ページ、大神一郎と酷似した後ろ姿の人物が登場し、「この劇場で一番有名なモギリさん」と紹介される。よってこの日は、大神が帝劇を離れていた1924年4月〜1925年3月や1926年5月〜12月という事はなさそうである。
 しかしモギリの制服は皆同じであるので、彼が大神であったという保証はどこにもない。大神のいない期間に、彼と髪型の似た有名な人物を雇っていた可能性だってある。
 2巻185ページ、花組の稽古の台詞が、「宮さん」と「貫一さん」の対話である。よって1923年7月公演『愛はダイヤ』の時期の可能性が高い。
 しかしこれは、リメイク公演の可能性もあるし、アンコールの際のサービス劇の練習をしていたのかもしれない。『轟華絢爛』では、この二人の掛け合いを無理に長引かせた即興のサービスが客に好評であったので、それが伝統と化していてもおかしくはない。また休憩中にふざけていただけという可能性もある。
 他に、設定そのものから考える方法も試した。
 ゲーム第一作では、降魔戦争の終結から1924年元旦までの間、降魔はほとんど(あるいは全く)地上に現れなかった設定になっていた。よって降魔と戦うこの話は、それ以後のものである可能性が高い。
 しかしこの設定は、『桜華絢爛』や漫画版『サクラ大戦』等によって既に無視されてしまっている。重視する訳にはいかない。
 また、以前別の記事(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20130629/1372436348)でも紹介したが、小説版の『サクラ大戦・巻の三』の44ページの藤枝あやめの台詞を信じる限り、この時点では奏組は存在しない。「この時点」とは、1923年夏の長期公演『西遊記』の千秋楽の日の夕方である。
 だが、これとて重要機密として大神にも秘密にしたのだと言い張れば、言い張れない事もない。また支配人と隊長との間の中間管理職も、奏組においては副支配人ではなく総楽団長となっている。あやめですら奏組の活動を知らなかったという可能性は、十分に考えられる。
 以上により、私は現時点では奏組の歴史を『サクラ大戦』シリーズの年表に組み込む事を諦めている。
 何か私が見落とした決定打を発見した方は、コメント欄に書き込んで欲しい。
サクラ大戦 (通常版)

サクラ大戦 (通常版)

サクラ大戦 漫画版 1 (1)

サクラ大戦 漫画版 1 (1)