チェンバレン「不侵略条約? さては侵略する気だな!」 横田喜三郎著『法律つれづれ草』(小学館・1984)

 九年程前、チェンバレンを擁護し、チャーチルを批判する記事(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20090927/1254030741)を書いた。
 チェンバレンの「宥和」が単なる弱気のものではなく策謀も活用した老練な戦略だったのに対し、チャーチルの「強硬」が犠牲を増やすだけのヒトラーまがいの子供っぽい戦略だったという事実を、紹介した。
 しかし悲しい事に弊ブログの影響力は非常に弱い。なので、今でも多くの三流保守は、北朝鮮への強硬策を主張する際に自分をチャーチルに擬えるという行為に耽っている。
 そういう次第で私は、鬼畜と戦って死んでいった英霊達の鎮魂のためにも、もう一踏ん張りしなければならないと常々思っていた。
 そんなある日、横田喜三郎著『法律つれづれ草』を読んでいたら、62ページに面白い記述を見つけた。1940年3月のチェンバレンの演説の紹介である。以下に引用をしてみる。
 「ドイツが、オランダ、ベルギー、デンマルクなどの中立を侵害し、これらの中立国を通って、フランスやイギリスに攻撃を加える危険が切迫している。わけても、デンマルクに侵入する危険がとくに切迫している。なぜなら、ごく最近に、ドイツがデンマルクと不侵略条約を結んだから……」
 ここまで敵の良心に対して懐疑的であり、しかも正確だった予言というのは珍しい。
 これを読んでも、チェンバレンを「お花畑」の代表例として扱うというのは、かなり不誠実な態度であろう。
 余談になるが、この話は「国際法にはちゃんと強制力があります。破ると第一次世界大戦第二次世界大戦のドイツのように、武力でボコボコにされます。」という文脈の中で出てくる。これまた、世間一般の横田喜三郎の印象とはかなり違うのではなかろうか?