村崎百郎氏の死に関する、報道への若干の疑問

 本日の日記は昨日の日記(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20100724/1279952617)の続編的性格が強いので、未読の方には先に昨日の日記をお読み頂きたい。
 本日も引き続き、唐沢氏批判は無しの方向で話を進める。仮説2−1に書いた通り、知人の死の直後はまともな人間ですら気が動転して当然であるし、1−1で書いたマスコミ関係者からの情報のリークのリークだった場合は、「村崎さんの死について未発表情報を教えてやるしその情報を公開しても良いが、情報源はおろか、口止めされている事すら、ばらしてはいけない。この約束を破ったら・・・。」みたいな事を言われている可能性もあるからだ。
 ただし、今後新たな情報を入手した場合等においては、今回の一件を批判的に蒸し返す可能性は零ではない。
 本日は、昨日調べた事を元に、マスコミによる報道について感じた疑問を二つ書いてみる。
 まず、『トンデモない一行知識の世界2』の『村崎百郎さんのご冥福をお祈りします。』の記事(http://tondemonai2.blog114.fc2.com/blog-entry-494.html)について。
 ここでは、村崎百郎氏殺人事件の犯人が「2ちゃんねるで彼の自宅住所を調べ乗り込んだ」という情報の出典を、唐沢氏が「サンケイスポーツ」であるとした事について疑問が呈されている。
 確かにトンデモない一行知識氏が引用した、サンケイスポーツの『作家の村崎百郎さん、刺殺される(http://www.sanspo.com/shakai/news/100724/sha1007240503006-n1.htm)』の記事では、「自宅の住所はネットで調べた」としか書かれていない。
 しかし実はこれに関しては、唐沢氏は嘘を言っていないのである。
 驚くなかれ、サンケイスポーツには『作家の黒田一郎さん、自宅内で刺され死亡(http://www.sanspo.com/shakai/news/100723/sha1007232323023-n1.htm)』という記事もあり、ここでは「(黒田さんの)住所は2ちゃんねるで調べた」とされているのである。
 勿論、サンケイスポーツの何という題名の記事かまで正確に書かなかった唐沢氏にも、最初に発見したサンケイスポーツの関連記事に飛びついてしまったトンデモない一行知識氏にも、それぞれ「落ち度」を観念する事は可能ではある。しかし、ここでサンケイスポーツを差し置いて二人を責めるのは、少々非常識であろう。
 ここまで類似した内容の記事を続報や訂正記事である事を明言せずにネット上に掲載するというのは、報道機関として誉められた行為ではないと、私は思う。
 続いてもう一つも、新聞の報道に関する話題。
 私は昨日、「仕事中」と「ファンを自称する男」の出典を探すため、東京都内の図書館で読売・朝日・毎日・日経・産経・東京の六社の新聞を読んだ。
 全ての新聞社が、24日の朝刊で、村崎氏の死を報じていた。そしてどの社の記事にも、「仕事中」や「ファンを自称」と見做し得る記述は存在しなかった。
 ただし、少々他社と毛色が違って見えたのが、朝日と産経であった。
 朝日新聞では、村崎氏殺害事件の記事の直後に、学者への誹謗中傷をネットに書き込んだ学生の逮捕の記事を並べていた。この学生は、2ちゃんねるで被害者の思想が右翼的であると学び、犯罪に走ったとの事である。
 ネットが絡んだ事件の記事を連続で並べたこの配置は、単なる偶然なのかもしれない。しかし私は、「朝日新聞の攻撃対象は、右翼から匿名掲示板へとシフト中なのかなぁ?」等と、つい深読みしてしまった。
 産経は、事件の概要を報じた後、村崎氏を知る人物の「『鬼畜系ライター』というイメージとは違い、ごく普通の丁寧な印象の人。売り出すためにあえて刺激的な方向を打ち出したのだと思う。」というコメントを紹介していた。付記されたこの好意的なコメントのせいで、他社よりも記事が長くなり、その分だけ村崎氏が重要人物でしかも善人という印象が醸し出されていた。
 これも単なる偶然なのかもしれないが、「イラクで邦人三人が人質になった際に村崎氏が産経新聞の主張と共同歩調を採った事への感謝の気持ちの顕れなのかなぁ?」と、つい深読みしてしまった。
 たった一つのサンプルだけでどうこう言う積もりはないが、「朝日・産経の二社を余り特別視しない方が良い。」という私の長年の主張が少々ぐらついたのは確かである。あるいは深層心理においては当初からぐらついていて、その偏見が今回の厳しい深読みにつながったのかもしれない。