もう一人の海幸彦

 海幸彦は、弟の山幸彦に大事な釣り針を強引に持ち出された挙句、それを海の底に落とされた、神話上の哀れな人物である。しかも「あれじゃなきゃ駄目なんだよ!ちゃんと探してこい!」と怒っていたら、海神が山幸彦の味方になったせいで呪いをかけられ、次第に貧しくなってしまった。そこで最後の賭けとして山幸彦に戦いを挑んでみるもやはり負けてしまい、結果として子々孫々まで低い身分にされてしまったのである。一方山幸彦の子孫は今の天皇家にまでなったと言われている。
 そして月日は流れた。
 ある日、山幸彦の子孫の後鳥羽天皇は、大事な剣を関東の武人達のミスで海の底に沈められてしまった。「あれじゃなきゃ駄目なんだよ!ちゃんと探してこい!」と怒っている内に、いつの間にか関東の武人達は実力を蓄えてしまっていた。そこで関東の武人達に戦いを挑んではみたのだが、結果は周知の通りである。