『BLASSREITER』(ブラスレイター)全話視聴計画(第13・14話)

BLASSREITER (VOL.7) [DVD]

BLASSREITER (VOL.7) [DVD]

第13話 遠い記憶
 前回の戦いでXATは壊滅し、僅かに生き残った者の内でもヴィクターとメイフォンがさっさと転属してしまったのだが、ゲルトを主役とする例のフェイクだらけのオープニングでは、未だに名脇役としての活躍を見せ続けている。
 ただし、XAT署内を舞台としていたエンディングだけは、今回から流石に変更となっていた。
 前回の戦いで傷ついたジョセフは、アマンダに救われて故郷の教会に辿り着く。そこでジョセフからアマンダに語る昔話という形で、ジョセフの過去の物語が描かれる。
 幼い頃のジョセフは移民の孤児であり、教会で育てられていた。かなりの程度、アマンダに会うまでのマレクに似た状況である。彼をいつも苛める上流階級の子供達が三人組であるという点まで、マレクと同じである。そしてマレクと同じく、迫害の中で神への不信に悩む。
 神父は必死で孤児達を支えていたが、大洪水で多くの難民が教会に押し寄せたため、ついに過労死する。教会の中では、新生児の餓死等、地獄絵図が描かれる。
 ジョセフが全てを諦めかけたその時、若き日のザーギン率いる救援部隊が到着し、てきぱきと食料・医療を提供する。後年のザーギンは黙示録における神を意図的に気取るのだが、衒いの無いこの時のザーギンの方が寧ろ福音書におけるキリストのイメージを色濃く反映している。
第14話 聖者の選択
 前回は皆が救われたかに見えたのだが、移民を嫌う暴徒が教会に焼打ちを仕掛けてくる。しかもこれは野放図な攻撃ではなく、逃げ道を土嚢で封鎖する等、それなりに知恵を振り絞って行われた火計であった。
 この危機は、ジョセフとザーギンの活躍で一旦は切り抜けられる。
 そしてジョセフはザーギンの友人になった事で、実の姉であるサーシャと出会う。たった一人の家族が出来た時期やその続柄という点でも、やはりジョセフの経歴はマレクに似ている。
 サーシャは初の移民出身の研究者であり、人類を進化させて病気では死ななくなるようにする研究をしていた。これが後の融合体化の技術の先駆である事は、この時点で容易に想像出来た。
 物語が明るくなってきた途端に、また移民に不幸が襲い掛かる。教会での集団生活が祟って、子供達の間で猩紅熱が発生するのである。先の火攻めといい、本来弱者の砦である筈の教会が、弱者を閉じ込めて不利益を与える施設へと容易に転化する有様は、非常に皮肉である。
 また子供達に感染が急速に広がった理由の一端として、大人の手を借りずに自分達で救援物資の毛布等を分配したという事実も含まれる事が示唆される。大人達は洪水の結果として、漸く復興事業という職場を手に入れたため、子供達の面倒を見ていられなくなったのである。「不幸中の幸い」が更なる不幸を招いたのである。
 ザーギンは己の経歴に傷が付く事を恐れず、大学からジョセフと抗生物質を盗むが、その直後に武装した兵隊に囲まれる。この過剰な防犯部隊の指揮官は、何とあのヴィクターであった。この男は実に様々な職業についてきたものである。この不祥事は、サーシャが折角作ってきたヴィクター「所長」への貸しを解消する事で、何とか不問となる。
 こうして彼等が手にした大量の抗生物質は移民に配られ、漸く事態は明るくなりかける。しかし曙光を見せておいてどん底に叩き落とすというパターンは更に踏襲される。
 ザーギンの移民救済活動を嫌う下層民達が、サーシャを集団で殴り殺すのである。彼等はおそらく洪水復興事業の労働力として、移民とライバルの関係にあったのであろう。
 今までこの物語で描かれてきた苛めは上流階級によるものであった。それはそれで十分酷いものであったが、長期的利害に目聡い上流階級は、例えばヨハンの母に見舞金を渡して事を穏便に済ませるとか、ジョセフを殴る際には後でばれないように顔以外の場所を狙うとか、最低限の自制があった。しかし彼等にはそれすらないのである。
 これだけの対価によって配られた抗生物質だが、何と子供達は自己の拙い判断でこれを少額で売り払い、僅かな食糧に変えて親への贈り物とし、次々と猩紅熱で死んでいく。彼等がこのような行動に出たのは、親達が給料の遅配で飢えていたからである。
 これでもか、これでもかと、この世の不幸を見せ付けられている気分になる。
 ヴィクターは世界に絶望したザーギンの心につけこんで、彼をナノマシンで生きた兵器に変え、己の世界変革活動に利用しようとする。だが力を手にしたザーギンはヴィクターにすら反旗を翻して、世界をより徹底的に変えようとする。
 反対するジョセフにザーギンは致命傷を与え、その上で彼を感染させて力を分け与える。
 以上がジョセフがアマンダに語った昔話である。
 語り終えた瞬間、最新鋭の複数の戦闘機が彼等を迎えにくる。操縦者の中にはメイフォンもいて、死んだ筈のサーシャもいた。
小型新約聖書 詩編つき - 新共同訳

小型新約聖書 詩編つき - 新共同訳