以前から興味があった『機動戦士ガンダム MS IGLOO』シリーズ全九話を、本日は観賞した。
想像以上にCGは美しく、キャラクター達はアニメどころか下手な俳優よりも表情が出ていた。時にはCGである事を忘れてしまった程である。
かつてはCGだと重みが出ない等と言われたモビルスーツも、手描きより質感が出せていた。ザク・ジムどころかボール・61式戦車に至るまで、様々な媒体で雑魚扱いされてきた兵器が、如何に強く、恐ろしく、大きく、美しいものであるかが、身に染みて解った。
『08MS小隊』の序盤が好きな人には、特に相性が良いかと思われる。
以下、各話で思った事を個別に。
大蛇はルウムに消えた
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ルウム戦役におけるシャアの活躍等も描かれていたが、巨砲に感情移入していたせいで、モビルスーツには大して感動出来なかった。
巨砲を中央に備えた馬鹿でかい兵器としては、その後もモビルアーマーが数タイプ開発されたが、ついに費用対効果の問題からモビルスーツに取って代わる事は出来なかった。本作はそうした開発史の先駆的な話とも言える。
中佐待遇の艦長の右往左往ぶりは、軍属になったばかりの人間の素人臭さが非常に良く滲み出ていた。そして実は主要登場人物の中では主人公ではなく彼こそが、一年戦争終了までの間に最も顕著な成長を見せるのである。
同乗する政治将校の女性の階級「特務大尉」も中佐待遇との事。日本海軍では特務大尉は大尉以下の存在だったのだから、中佐待遇の大尉を作りたいのなら、別の「和訳」を考えるべきであったと思われる。
また中尉時代のシャアのザクに角が生えていたのも、『ギレンの野望 ジオンの系譜』の映像と矛盾してしまうので、少々残念であった。
遠吠えは落日に染まった
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かつて不採用に終わった戦車「ヒルドルブ」の実験機が、同機を愛する天才的な乗り手の活躍で、この偽ジオン部隊を奇跡的に全滅させる。
とはいえ、兵装の情報が相手に知られてなかったからこそ、意表を突き続けて何とか引き分けただけの話である。二機目が生産されても同じ様な活躍は望めないだろうと思われる。加えて、乗り手が天才でなかった場合には、様々な兵装も宝の持ち腐れで終わるであろう。
ラストで語られる技術中尉の報告書は劣悪で、ヒルドルブ不採用の決定が誤りであったと事実上決め付ける文面になっていた上、倒したザクの数も「複数」とのみ表現されている。いくら大学卒業直後という設定だからといっても、これでは余りに無能過ぎる。
軌道上に幻影は疾る
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ツィマッド社のEMS-10が実はEMS-04から何ら進歩していない事を暴く、連邦の報道番組では、通謀者の存在がほめのかされ、ジオニック社のMS-05が高く評価されている。
こうした事からツィマッド社出身の少佐は、ジオニック社が情報を流したと思い込んでいた。しかしこれでは余りに単純過ぎる。ジオニック社が連邦と通じているかもしれないと中途半端に賢い人間に推測させてジオン国内に不和の種を撒く事こそ、連邦の真の目的だったのではあるまいか?
ジャブロー上空に海原を見た
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光芒の峠を越えろ
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ボールと、それをやや上回る程度の性能の兵器とが、互いに新兵を乗せて戦う、実力伯仲(寧ろ「叔季」と言うべきか?)の勝負が面白い。
敗北して投降したボールごとジオン機を消し飛ばした連邦軍は、非道とはいえ現実的でもある。これはおそらく、ゲル・ドルバ照準でコロニーレーザーを発射したギレンの行為とその結果とを暗示しているのであろう。
なお「星一号作戦」という名称を主人公が「後に知る」という設定がこの話で語られてしまったため、次の話を手に汗握って観賞する事が出来なくなってしまった。
雷鳴に魂は還る
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ジオン側は序盤から悲壮感が溢れており、劣勢が強調されている。「圧倒的じゃないか、我が軍は」の設定は残念ながら無視されている。
一応の最終回。次回からは地上戦を描いた『IGLOO 2』である。
あの死神を撃て!
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「陸戦というからには、どうせ最初は61式戦車で頑張る話からなのだろう。」と予想していたのだが、この予想以上に劣悪な武器で頑張る連邦の歩兵達が主役であった。
陸の王者、前へ!
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『白鯨』のエイハブ船長がモデルと思われる義足の中尉は、「ホワイトオーガー」の異名を持つザクを倒す事だけを考えている。倒しさえすれば、人生が変わると思い込んでいる。
常識的な因果関係に基く限り別の目標の手段とは成り得ぬ何らかの目標を情熱的に追う者の姿は、確かに他者には「狂気」を連想させる。だが私は、『砂の女』で突如達観して目標を捨ててしまった瞬間の仁木順平にもまた、別種の狂気を感じる。仁木風の狂気に陥るのを怖れて、人は必死でエイハブ風の狂気を自分に取り付かせ、日々生きているのかもしれない。
オデッサ、鉄の嵐!
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主人公の乗る機体は、外見の観点からも形式番号に含まれる「44」という数字の観点からも、『F91』で登場したものと進化の系統を同じくすると考えられるガンタンクである。
悪い意味で文官じみていた皮肉屋の少佐が、いざという時に比較的一番冷静だった(足がすくんでいただけかもしれないが)という場面では、『08MS小隊』の最終話のライヤー大佐を連想させられた。
発言者にとってすら単なる失言と評価されたある発言が、実は重要な伏線だったという展開には、前回に引き続き驚かされた。
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