『サクラ大戦TV』(第一〜五話)

サクラ大戦TV DVD-BOX

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 テレビアニメ版の『サクラ大戦』を見始めた。
 この作品は古参ファン達の間で評価が低いらしく、貸してくれた人も「途中で厭になったら止めても良いよ。」と言ってくれた程であった。
 しかし実際に見始めてみると、非常に名作であると感じられた。本日から五話ずつ紹介していきたい。
第一話 さくら 帝都に来る
 真宮寺さくら帝国華撃団歌劇団)の新隊員として招かれて上京してくる話。
 劇中で「国」や「団」の新字体が使用されていたのは減点要素。
 神崎すみれの実家が川崎にあると判明。よって「神崎重工」は「川崎重工」がモデルなのだろう。
 ゲームと比較して、すみれはやたらとピリピリしているし、アイリスは暗い。こういう所がゲームのファンに嫌われた要因の一つなのであろう。だが偶然霊力を持っていただけの少女達が命懸けの戦いに駆り出されたならば、いつも楽しく過ごしている方がおかしい。私はゲームの雰囲気もそれなりに好きだが、同時にまたこういう現実味のある雰囲気も好きである。
 原作ファンを利用した一時的な成功を狙わずに、独自の世界を築こうとしたスタッフの意気込みが伝わってくる。因みに、愉快な原作を深刻化させた改作としては、他に映画版『攻殻機動隊』や小説版『機動武闘伝Gガンダム』等が挙げられる。
 当然ギャグの要素も抑えられている。原作では「わたくしの美しい光武が・・・」と言っていたすみれは、類似の状況下で「わたくしの光武が・・・」と言う。抑揚も真面目である。
第二話 守るべき都市
 最初の戦闘が発生する。
 脇侍はゲームとは違い、生体ユニットが大量に使われており、より不気味な存在となっている。
 支配層は、帝都再開発のために脇侍による長屋の破壊を黙認して、陸軍を敢えて待機させる。ゲームでは全く描かれなかった大人の事情である。
 帝国華撃団の隊長であるマリア=タチバナまでもが、被害が都心でなく長屋で良かったと平気で口にする。
 私はここで、こうした傾向こそが「都市が産む闇」であり、ゲームやアニメで「闇の者」として出てくる連中は、これを解り易く具象化したものではなかろうか、と思った。
 そして長屋の住民と心を通わせていた真宮寺さくらは、こうした考え方を批判し、敢然と脇侍に立ち向かうのである。
 神崎すみれが生身で戦う場面もあった。これはゲームでは見られなかったレアな場面であり、中々に嬉しかった。
 ゲーム第一作ではほとんど登場しなかった真宮寺一馬の幽霊が登場したのも、今後の展開を色々と想像させられ、非常に期待感が高まった。
第三話 さくらの初舞台
 真宮寺さくらが舞台稽古を通じて戦闘能力を開花させる描写があった。
 ゲームでは帝国歌劇団帝国華撃団のダミーとしての機能が強調されていたが、こういう描写を見せられると戦闘員が舞台女優を兼ねる事にも得心がいく。
 本編はひたすら暗くて真面目なのだが、予告編では神崎すみれがやたらとふざけていた。この激しい落差も面白い。
第四話 華撃団の新隊長
 学生時代の大神一郎と加山雄一が登場する貴重な話である。
 加山にも光武を動かすための最低限の霊力が備わっている等、様々な裏設定にも出会える。
 アイリスが親子関係に悩んでいたり霊力が暴走しやすかったりといった設定も早々と明かされる。
第五話 邪悪なる影
 霊能部隊「夢組」が登場する。
 ゲームではこういう支援部隊の姿が主人公の視界にほとんど入ってこなかったので、私は花組だけで大敵を撃破した積もりになっていた。そして大神一郎の昇進の遅さを不思議に思っていた。
 こういった近接戦闘以外の部署で日々陰ながら奮闘している隊員の姿を見て、漸く自分の増長慢に気付かされた次第である。
 戦闘はやたらとリアルであり、まただからこそ泥臭い。
 生命の危機を感じながらこけつまろびつぎりぎりで脇侍の攻撃を避ける真宮寺さくら
 脇侍に殴られ、相手を刺殺するもその傷口から溢れ出る汚い体液を大量に光武に浴び、強姦されたかの様な気分になって身動きが取れなくなってしまった神崎すみれ。
 武器を破壊されたため、ハッチを開いて生身で拳銃を撃つ事で辛うじて勝利したマリア=タチバナ
 戦果は、各人がやっとの思いで雑魚を一体倒しただけである。
 精巧な機械と機械が華々しく戦うゲームとはまるで雰囲気が違う。
 当時こうした雰囲気を嫌悪してしまった視聴者には、是非DVDを購入してもう一度大人の目でこの戦いを見直して欲しい。ゲームも何倍も燃える戦闘がここにはある。
 ゲームでは滑稽だった敵幹部「紅のミロク」も、やたらと不気味に描かれていた。
 なお、すみれの「御父様にもぶたれた事無いのに。」は『機動戦士ガンダム』へのオマージュであろう。
サクラ大戦 (通常版)

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