『サクラ大戦TV』(第六〜十話・TV版第九話)

 本日も『サクラ大戦TV』を五話紹介する。なお、第九話に関してはTV放送版と再構成版とがあるので、両者を紹介して比較する。
第六話 光武の心
 第五話で苦戦したため、急遽李紅蘭と桐島カンナの二名が呼び戻される事となった。そして今回登場したのは李紅蘭の方であった。
 当初私はゲームの印象に引き摺られていたので、この二人加わっても大して変わらない気がしていた。だが紅蘭は光武の専門家として新米の大神一郎真宮寺さくらに色々と助言を行い、これによって二人は少し開眼していたので、米田司令の判断は正しかったと思い直した。
 紅蘭は明るいし、劇中の天気も晴れだったので、前回の陰惨な雰囲気は払拭されていた。
 だがこれは視聴者に仕掛けられた罠であった。後半では黒之巣会幹部の「蒼き刹那」が諜報部隊の月組の隊員を殺し、その死体をマリオネットにして楽しむという、残酷な描写がある。
 柔らかい画風で誘っておいてグロテスクなものを見せた『魔法少女まどか☆マギカ』の源流とも言える手法である。考えてみれば、魔術的な才能のある少女が集められて命懸けの戦いを強いられるという点では、本作も魔法少女というジャンルの一翼を担っている訳であり、その意味では『まどか』の源流に遭遇するのは当然と言って良い。
第七話 おいしい秩序
 桐島カンナが登場し、刹那に追われていた月組の加山雄一を腕力で救う。ここまではゲーム版のカンナでもやりそうな行動である。
 しかしTV版のカンナは頭も良い。米田司令が「でなぁ、助けた奴の事なんだが、」と言った瞬間、即座に加山が諜報員である事を見抜き、「忘れちまったよ、じゃーなー。」と答えている。米田はこの態度に深く感謝している。
 その後の展開も凄い。
 カンナは隊員が協力してカレーを作る事を提案する。それまで誰も自力でカレーを作った事が無かったのだが、それぞれの特性を活かして協力する事で、美味しいカレーが出来上がる。
 肉体労働が嫌いな神崎すみれすら、その知識と味覚を活かして味見役として貢献する。ここで敢えて和食ではなく「カレー」を提案したカンナの深い配慮が判る。
 カンナはアイリスにも自然な形で簡単な作業を与え、部隊の一員としての連帯感と自覚を持たせている。
 またこの作業とその後の戦闘の経験により、それまで隊員の戦闘能力の均質化を目指していたマリア=タチバナが、各員の個性を重視した上で互いに補い合う方針に従う決意をする。
 カンナ一人が来た事で、一気にすみれ・マリア・アイリスが心を開いたのである。はっきり言って、個性的な隊員を纏め上げる「触媒」としての実力は、その目的で招かれた隊長の大神一郎を遥かに凌駕している。
 ただし、カンナが体育会系のこうした手法を押し付ける決意が出来たのは、やはり大神との対話を通じてであった。この場面が無ければ、大神は物語における存在意義を失っていたであろう。非常に深く練られた脚本である。
 なお、ゲームではまだ知性の片鱗が残っていた「白銀の羅刹」は、不気味に唸りながら暴れるだけのキャラになっていた。
第八話 これがレビュウ!
 大英帝国の文化親善大使を歓迎する特別公演が行われる。そのポスターにおける「国」の字体は第一話と違ってしっかり旧字体になっている。
第九話 火喰い鳥と呼ばれた少女
 ロシア革命に際し、自分の判断より上司の命令を優先したために、結果としてその上司を見殺しにしてしまった事を、マリア=タチバナは悔いていた。そして今回の戦いで、命令違反をしてでも大神一郎を救出し、そのトラウマを克服する。
 帝都のどこにいつ敵が登場してもおかしくない状況下で、帝国華撃団のほぼ全員が連れ立って生身で外出する場面があり、ここが非常に残念であった。
 しかも、第四話ではアイリスがちょっと出歩くと直ぐに大勢のファンが尾行を始めていたし、また第八話の帝国歌劇団マニアの発言によれば神崎すみれやマリアはアイリスを上回るスターであった筈である。よって仮に黒之巣会への油断があったとしても、そもそもこの連中が連れ立って平気で外出しているのはおかしい。
 突如街中に登場した刹那・羅刹によって大神は拉致されてしまうが、油断してのこのこ外出していたのであるから、余り同情は出来なかった。
TV版第九話 火喰い鳥と呼ばれた少女
 マリア=タチバナの上司は単に流れ弾に当たって死んだ事になっていた。このため、マリアの命令違反に深い意味が付されていなかった。この点では確かに再構成版の方が優れていた。
 しかし大神が捕虜になった経緯は、TV版の方が自然であった。
 黒之巣会が地下で活動していた理由も、地上の権力が存在ごと抹殺した死人を復活させていたからだと判明する。この点もTV版の方が奥が深い。
 再構成版では真宮寺さくらが無理にマリアに同行していたが、TV版のさくらは脇役である。これについては好みが分かれるであろうが、誰もがヒロインに成り得る『サクラ大戦』というコンテンツの姿勢を重視するならば、時にはこうしてさくらが目立たない回があった方が良いと思う。
第十話 嵐を呼ぶ女
 ゲームでは第二作から増設された遊戯室が早くも登場していた。
 全体的な雰囲気がゲームに近い、コミカルな話であった。
 ただし、軍人・軍属ではないのに、ほぼ確実に「死んだ」と言える状況に遭遇する人物が、この話で初めて登場する。どこまでも油断のならない作品である。

サクラ大戦 (限定版)

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