『虞禮寧子』虚襤褸子篇(道外禰子章)

 最近私は『虞禮寧子(ぐらいねいし)』という奇書を入手した。気に入った箇所の拙訳を披露していきたいと思う。
「性欲は自力で満たせるが、食欲はそうはいかない。困った事だ。」
 ディオゲネスが世界人類の経済活動から独立出来ない事をこう嘆いていると、一匹の蛇がやってきて言いました。
「僕は自力で食欲を満たす方法を発見したよ。ほら、こうすればいいのさ。」
 蛇は自分の尻尾をくわえ、食べる真似をしました。
 ディオゲネスは馬鹿にして言いました。
「ははは。それではやがて死んでしまうぞ。」
 蛇は呆れて言いました。
「何だ。君は自分の命が惜しい人だったのかい。それならそうと、先にその特殊条件を言ってくれ。」
 ディオゲネスが驚いていると、蛇は続けてこうも言いました。
「さて、君が発見したとかいう、自分の一部を全くすり減らさないという特殊条件の下でも出来る性欲の満たし方を、僕に教えてくれないか?」