『ワルイオンナ』鑑賞記

 類類(http://ameblo.jp/luilui-naomegu/)の第二回公演『ワルイオンナ』に行ってきました。
 俳優は類類所属の及川奈央氏・久下恵美氏の御二人だけで余所からの応援は無し。そして及川氏が二役を演じるので、登場人物は三人だけの話です。俳優の数も登場人物の数も、私が直に体験した新劇の中では最小でした。話の内容は事前にほとんど発表されていなかったので、チケットを購入した時点では物珍しさが最大の動機でした。
 しかし実際に鑑賞してみると、質の点でも自分史上最高と言っても良い程の名作でした。
 離婚歴・年齢・容姿・罪悪感・障害等、様々なハンディに苦しむ三人の女性が、自ら傷つき、また互いに傷つけ合うという、非常に重苦しい主題の話でした。
 現代日本社会に生きる女性の苦痛を主として描くために敢えて男性の視点は外されていましたが、描かれる苦しみが多岐にわたっていたので、おそらく男性客のほとんども己の古傷を少しは抉られたと思います。そしてもしも全く古傷を抉られない幸福な人がいたとしたら、正にそういう人にこそ「世の中にはこういう苦しみもあるのだ!」と知って頂くために本作を観賞して欲しいものです。
 一般に「差別語」とされる単語も使用されていたので、そう簡単にDVD化は出来ないかもしれませんが、このまま関係者と鑑賞者の心の中にだけ残るというのは、少々勿体無い気がします。せめて脚本だけでも何らかの形で出版してくれないものかなぁ・・・。
 脚本家の北川亜矢子氏には今後も着目していきたいと思います。パンフレットによれば2012年10月6日の『世にも奇妙な物語2012 秋の特別編』の脚本も担当したらしいので、まずはこれを観賞してみる予定です。
 話が冴えたのは、類類の演技力という要因も大きかったと思います。ほとばしる感情・沈殿して澱む感情・複雑怪奇で自分でも分析不可能な感情を、様々に演じ分け続けた類類には脱帽です。
 パンフレットによれば、久下氏は私が近々観に行く予定の映画『ひみつのアッコちゃん』(http://www.akko-chan-movie.com/index.html)にも出演しているとの事。映画での氏の活躍も、今から楽しみです。