『サクラ大戦TV』(第二十一〜二十五話)

第二十一話 もうひとつの戦い
 「賢人機関」と呼ばれる上層部が、華撃団司令の米田一基に圧力をかけまくる。まるでゼーレとネルフの関係である。
 米田を心配した李紅蘭は、帝国劇場の中庭に五右衛門風呂を作って背中流し等をしてもてなす。神崎すみれは二階からそれを深刻な顔で見守る。深刻な顔のせいで気付きにくいが、社会的には単なる覗きと評価される行為である。
 米田はかつての部下である葵叉丹こと山崎真之介の暴走を止めるため、命懸けの戦いを挑む。封印には失敗したものの、その姿勢に心を打たれた藤枝あやめ副司令は、過去の想いを断ち切って山崎を負傷させる。
 終盤、刹那の発言から、加山雄一率いる月組にまたもや多大な戦死者が出た事が匂わされる。
 原作ゲームをやっていた時の私には、花組の活躍しか視界に入らず、大神一郎の昇進の遅さを嘆いたものだが、加山の方が実はずっと命懸けで戦い続けていたのかもしれない。
 なお、記録映像という形で星組が登場していた。第二作のファンへの貴重なサービスである。
第二十二話 帝劇、炎上!
 なんと華撃団の本拠地である帝国劇場に敵が侵入し、壊滅させられてしまう。
 生身で戦う華撃団は、光武に乗って戦う時より格好良い。
 最後は自爆する施設から地下の弾丸列車で脱出。『バイオハザード2』を思い起こさせる終わり方であった。
第二十三話 夢見る機械
 列車で逃げた先にあった花やしき支部が仮の本部になる。花やしき支部はゲームでは見る事が出来なかったので、少々嬉しかった。本部が劇場を装っているのに対し、花やしき支部は遊園地を装っている。
 李紅蘭は前回の戦いの中で、光武の発明者として長年尊敬していた山崎真之介こそが葵叉丹の正体だと知ってしまったため、ショックから立ち直れない。そして行方不明になってしまう。
 その後、帝都中に脇侍が出現するが、花やしき支部のオブジェを敵の破壊目標である天封石と誤解させて誘導させる作戦が成功する。
 この作戦を使うと、光武に乗っていない人間の霊能者にも影響が出て、幻を見てしまうという設定である。この幻を見て、紅蘭は精神的に立ち直り、再び華撃団に合流する。
 副作用としての幻覚という設定は、紅蘭が自然に立ち直る状況を作り出すとともに、「こんな便利な作戦を何故もっと早く使わなかったのか?」という批判にも「社会的な悪影響を考慮したから。」という弁解に使える、非常に優れたものであると思われる。
 また紅蘭が遅れた事は結果として奇襲の効果をもたらした。第十四話のアイリスの遅参と同じ構造である。これにより、視聴者から皆に迷惑を掛けた女だと嫌われるのを防いでいる。これも優れた配慮である。
 最後に紅蘭は光武の改造を決意する。これは山崎真之介の呪縛から解放された事を意味している。
第二十四話 絆
 神崎重工で光武の改造が進む。
 ここでは神崎すみれの父と祖父が登場し、家族間の和解が進む。家族関係が詳細に語られたのは、TVシリーズでは真宮寺さくらとすみれの二人だけであり、こういう点からも本作の主人公はさくらであり副主人公はすみれであると言える。
 光武改造後、刹那・羅刹が神崎重工に襲撃を仕掛けてくる。ここで大神一郎は自分が囮になって、他の隊員を帝都に向かわせる。この方針から見て、大神は到底本作の主人公の立場とは言えないが、同時にまた主人公という立場を乗り越えた何かになっているとも言える。
 帝都では、賢人機関が最終兵器で帝都を壊滅させようとしていた。山崎真之介に壊滅させられるよりは自爆の方がまだ良いというのが、その理由である。米田一基は、それでは山崎と同じだと反対する。
 山崎が何故帝都を壊滅させようとしているのかについては、本人の発言からはほとんど窺えない。だがこの米田の発言から、おぼろげながら想像はつく。莫大な怨念の眠る土地の上で都を維持するためには、降魔戦争を繰り返し続けて、莫大な犠牲を払わなければならない。それならばいっそ人の手で壊滅させて遷都した方が良いと考えたのであろう。山崎は帝都の自爆装置という敵の最後の切り札に気付いていなかったのではなく、帝都を復活した天海が壊そうが賢人機関が自ら壊そうがどちらでも良かったのであろう。
 米田は、華撃団が敗れたら自分が帝都を壊滅させる約束をしつつ、かなり強引に最終兵器の起動装置を賢人機関から奪取する。感動的な場面であるが、冷静に考えたらこれは軍人による一種のクーデターでもある。
第二十五話 夢のつづき
 最終回である。
 刹那・羅刹の攻撃に大神一郎は苦しむが、そんな状況でも仲間の心配を続けているが故に、大神機は粘り強い。逆転の気運さえ生じる。
 恐れをなした刹那は、大神とは対極的に自分だけは助かろうとして羅刹の肉体から分離して逃げ出す。羅刹は復活の際にミロクと同じく頭が悪くなっていたらしく、刹那に分離された後は木偶人形の様に棒立ちになり、大神に殺される。
 分離した刹那も、加山に簡単に仕留められる。
 傷付く事を怖れずに仲間を案じて戦っていれば、刹那もまたもう少し粘れた筈である。刹那と大神の姿勢の差と、それらがもたらした明暗とが、見事に対比されている。
 帝都で行われた華撃団と山崎真之介の最終決戦も、かなり高揚させられた。
 
 原作ゲームをしていなければ理解し難い作品であったが、同時に原作ゲームを遥かに超えた作品でもあった。その暗さや難解さの故に、放映当時にこの作品を毛嫌いした方々には、今こそ大人の目でもう一度観賞して貰いたい作品である。

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