「右派政権だからこそ可能だった日朝接近」と考えるならば・・・

 冷戦時代の国際政治の分析の一つとして、「アメリカが共産圏に対して大規模な妥協を行ったのは、共和党政権の時期が多い」という説を以前読んだ事がある。そしてその理由としては、左派政権が共産圏に妥協を行うとイデオロギー上の動機を勘繰られて支持率が急落しかねないのに対し、右派政権ならば思い切った妥協をしても国家百年の大計のためだと理解されるからだ、という説明がなされていた。
 この知識を基に、私はかなり以前から、「日朝接近が有り得るとしたら、それは比較的右寄りであると国民から認知されている政権の時代の出来事になるだろう。」と予測していた。
 そして実際に、一般に自民党の中でも右寄りと思われている安倍晋三が首班の内閣で、拉致問題に関して大きな進展があった。日本側が拉致事件再調査のために北朝鮮に支払う対価の密約について、色々と想像を逞しくしてその想像を基に政権を叩く声もほとんど聞こえてこない。
 左派で日朝友好を目指している人の中には、日朝交渉進展の功に免じて今後は安倍晋三批判に手心を加えようと考えている方もいるかもしれない。
 だが日本人の多数派から安倍内閣が極めて保守的だと思われている事が日朝交渉進展の重要な原因であるとするならば、今後もそのイメージを流布し続けた方が、却って日朝友好を促進するという可能性もあるだろう。