ドラマ『嬢王』シリーズを視聴し終えた。

嬢王 DVD-BOX

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嬢王Virgin DVD-BOX(5枚組)

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嬢王3 ?Special Edition?DVD-BOX(5枚組)

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 ドラマ『嬢王』シリーズを視聴し終えた。
 このシリーズは第一作から第三作まであり、どれも最強のキャバクラ嬢を決める戦いを描いた作品である。
 私が最初に紹介者からそう聞いた時には、かなりマンネリ化を心配したものであったが、到頭最後まで飽きなかった。
 その理由としては、筋書きや人物の造形において、極端なまでの「反転」が行われた事の効果が考えられる。
 まず主人公の立場についてだが、第一作は良くも悪くもビギナーである「藤崎彩」が、その青臭さを無意識の武器にして穴馬的存在として台頭していった。
 これが第二作になると、やはり主人公の杏藤舞はビギナーなのであるが、戦いの参加条件が若手に限られていたので、戦いの図式は大きく変化していた。ライバルの中には、同じく全くの未経験者から成長していった者もいた。本作では、周囲を感化して味方につけていった舞と、それ以外の戦い方を選んだ強敵たちとの、戦い方の手法の違いが見所となっていた。
 そして第三作では、既に抜群の知名度を得ている舞が奇跡の新人に追われる側に立つという、全く新しい展開となっていた。新人のやり口はかつての舞にかなり似ており、団体行動による分業体制で成果を築くというものであった。
 主人公を陰で支える女性も、第一作では経験豊富な親友、第二作では未熟者同士で密かな敵意も内包している競争者、第三作では感情をほとんど見せないボディガードと、これまた極端なまでに違っている。
 事実上の主催者である男性も、第一作が一見冷酷そうで実は情に厚い人物であったのに対し、第二作では冷酷そうで本当に冷酷な人物、第三作では温厚そうで実は冷酷と、極端なまでに違うタイプの人物が用意されていた。
 やたらと極端な性格の人物を作り、マンネリ化しそうになった際には既出の人物の設定の一部を一気に反転させた人物を作るというのは、江戸時代に一時的に流行した「気質物(かたぎもの)」を思い起こさせる手法である。
 一次的な視聴率を狙ったエロティックな場面も多かったが、それに頼り切らずに登場人物の葛藤や人間関係の悲喜劇を丁寧に描いていたので、おそらく再放送やDVD販売による長期的利益も相当なものになったと思われる。
 一方で、残念ながら手抜きの部分もあった。
 第二作で週刊誌の記事が拡大される場面で同じ文章の使い回しがあった事は、以前の日記(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20140101/1388573755)で指摘した通りである。
 そして驚き呆れた事に、第三作の最終話でも同様の手抜きが行われていた。この話でもやはり週刊誌の記事が拡大される場面があったのだが、これは短い文章を何度もペーストして長い記事に見せかけたものであった。このため「殺害されたのは、この店の店長の小宮山櫂人さん(26)。」という部分だけでも、記事中に何と六回も登場していた。