『サクラ大戦 紐育星組ショウ2014 〜お楽しみはこれからだ〜』

 『サクラ大戦 紐育星組ショウ2014 〜お楽しみはこれからだ〜』(http://sakura-taisen.com/event/ny2014/gaiyo/)を見てきました。
 今回の脚本はギャグが秀逸で、今迄で一番笑わせて貰いました。
 一方で脚本に関して残念だったのが、史実における当時のトーキーの隆盛を、そのままサクラ大戦の世界の歴史の中に入れ込んでしまっていた事です。
 サクラ大戦の世界では、1925年の時点で既に日本においてすらトーキーが盛んであり、そのせいで往年の大スターである玉梓つわ子が自殺までしていた筈です。これはOVAサクラ大戦〜轟華絢爛〜』(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20130412/1365760490)の第三話に出てくるエピソードです。そして玉梓つわ子の名は『サクラ大戦 〜熱き血潮に〜』中の台詞にも採用されたので、彼女の存在はほぼ完全にサクラ大戦の「正史」の中に認められた事になります。
 そうであるのに1930年前後を描いていると思われる舞台で、最近になってようやくトーキーが主流になってきたという設定を入れてしまう事は、そうした歴史を一気に崩してしまうものだと思いました。
 百歩譲って「舞台は別物」と割り切ったとしても、やはり納得がいきません。ベロムーチョ武田の台詞から、本作が同じく舞台劇であった『サクラ大戦 巴里花組ショウ2014 〜ケセラセラ・パリ〜』(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20140219/1392802450)の少し後の話である事は明らかでした。そしてやはりその前日譚である事が明らかな『サクラ大戦 巴里花組ライブ2012 〜レビュウ・モン・パリ〜』(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20140216/1392510933)では、テレビ電話のキネマトロンが更に進化して3D映像まで実現していた筈です。そうであるのに、大河新次郎が映像が喋る事について「凄い時代になったものだ」等と言っていたのは、非常に残念でした。
 今回のゲストの敵は、天才科学者ガッツ=ノートン。人間の影からその分身を生み出す機械を作ります。しかしこれに撮影された人間は存在感が薄くなってしまい、しかも折角生み出した分身は心が空っぽでまるで役立たずという、傍迷惑なだけの機械です。
 被害者はジェミニサンライズ。「双子座」の名に相応しい被害です。今までの彼女は一つの体に二つの心という意味でのジェミニでしたが、今回は二つの体に一つの心という状態になった訳です。
 このノートン、前半ではただの変人に見えたのですが、後半の戦闘シーンでは驚異的な身体能力を見せます。重い機械を持ち運びながら、リカリッタ=アリエスの射撃を全て避け、星組を撮影し続けます。彼のせいで存在感が薄くなっていたジェミニが警戒されずに皆の盾になったり奇襲攻撃をしたりしたので、星組は辛うじて勝利しますが、もしも彼が殺し屋で武器が銃であったならば、たった一人で星組を滅ぼせていたかもしれません。
 最後は、新次郎とラチェット=アルタイルの仲が進展する形で、綺麗に終わりました。
 『サクラ大戦V』のトゥルーエンディングがラチェットをメインヒロインにしたものであるという事は、『サクラ大戦 紐育・ニューヨーク』でも非常に間接的な形で匂わされていましたが(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20130102/1357052927)、今回でそれが一層明瞭に確定したと言えましょう。

サクラ大戦 ~熱き血潮に~(通常版)

サクラ大戦 ~熱き血潮に~(通常版)

サクラ大戦 巴里花組ライブ2012 ~レビュウ・モン・パリ~ [DVD]

サクラ大戦 巴里花組ライブ2012 ~レビュウ・モン・パリ~ [DVD]

サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~ 通常版

サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~ 通常版