全話視聴計画『牙狼 -紅蓮ノ月-』(第十五〜十七話)

第十五話 心月
 今回からオープニングの歌と映像が変わる。
 そこには赫夜も描かれており、本編のラストでも再登場している。今シーズンの副題の「紅蓮の月」と何か関係があるのだろうか?
 今回は『源氏物語』にヒントを得た話である。前回大量の貴族が死んだため、疎まれていた源融も都に呼び戻されるが、彼は既に火羅になっていたのである。
 前回で牙狼がパワーアップしたので、一話登場型の火羅如きは相手にならないのではないかと危惧していたのだが、戦いの最中に月が『炎の刻印』のブラッドムーンの時の様に紅蓮に染まり、その途端に火羅の能力が強化される。
 『源氏物語』に登場した「末摘花」と同じ名を持った女性も登場するが、人目のある場所に平気で出てくる等、性格は原作と大違いになっている。彼女はエンディングの映像にも登場し、レギュラー化が示唆される。
第十六話 最低
 第一話以来、駄目な貴族の典型として描かれてきた橘正宗に焦点が当てられた話。
 故賀茂保憲に「様」を付けていたので、大して身分は高くなかった事も判明する。ただし第五話の言動を見るに、藤原保昌源頼信よりは偉そうである。
 本妻を差し置いて色恋にばかり耽り、光宮への出仕にも励まず、本家からも絶縁されている等、「最低」の題に相応しい設定が次々に明らかとなる。
 和泉式部とそれなりに仲が良く、身分の割には藤原道長の夜宴にも顔を出しているので、史実で和泉式部の夫であり藤原道長の部下であった橘道貞あたりが一応のモデルとして想定されているのだろうが、敢て名前を変えたのは度を越した駄目人間を自由に描くためであったものと思われる。
 ちなみに法律の世界で「橘正宗」というと、商標法によって出願が拒絶されそれが最高裁でも確定した有名な出願商標である。貴族風の名前でありながら現代人に負の印象を抱かせる効果があり、かなり見事な命名である。
 今回登場した火羅は、自分の身を守るため雷吼の記憶から星明の首を再現して、自分の頭につけていた。
 しかし雷吼は躊躇なく火羅を斬る。これは、前回独り立ちをした雷吼が精神的な意味での母殺しを完成させた事を、象徴的に描いた場面である。
第十七話 兇悪
 前半のエンディング画像でも格好良く描かれ、史実ではその後も活躍した筈の、あるレギュラーキャラが、実は火羅だったという話。この展開にはかなり驚かされた。
 蘆屋道満の顔の傷が藤原道長のせいでついたものだという設定も明かされる。