西暦1954年、初代『ゴジラ』が映画界にデビューした。
戦争や原子力の脅威を、怪獣を使って比喩的に描いた作品である。怪獣映画という本来は子供向けのジャンルでありながら、その作風のレベルはまさに芸術であった。
芸術を鑑賞する能力のあった者たちは、続編の制作に期待をした。
ところが次に作られた『ゴジラの逆襲』は、いわば「正統派」の子供向けの怪獣映画であった。
がっかりした初代派は、次こそは原点回帰してくれるかもしれないと第三作を見にいき、やはりがっかりした。
これが繰り返されるうちに、初代公開当時には少年少女だった者は、やがて小父さんと小母さんになり、ついには御爺さんと御婆さんになった。
それでも初代に匹敵する芸術性のあるゴジラはやってこなかった。
だが彼らは待ち続ける。芸術的なゴジラを。
そして隣の丘では、彼らより一世代若い連中が「次こそはまた刻が見えるかもしれない」と唱えながら、角の生えた白いロボットの連作の続編を待ち続けている。
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