自分の周囲で、『ボイス』という韓国のホラー映画が面白いらしいから借りて観ようという話になった。参加者は全員未見であり、ネタバレ情報すら持っていなかった。
借りる担当の者は、棚に『ボイス』と『ヴォイス』があったので、どちらが本物か判らなかったらしく、両方借りてきた。
世の中には有名な作品に似せた邦題を付ける商売が蔓延しているので、どちらかがつまらないB級映画に違いないと、この時点では皆が思っていた。
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これは非常に秀逸なホラーであった。
序盤から中盤まで、科学で説明の付く人間の陰謀がもたらす怪異を扱った作品なのか、それとも幽霊物なのかが、判別出来ない仕組みになっていた。
我々は約10分ごとに一時停止をして、その後の展開を予想し合った。
そして終盤、物語は様々などんでん返しを経て、一気に辻褄の合った話として完結した。
一番褒めたいのは、伏線の張り方である。前述した通り、様々な誤誘導もあったのだが、それでいて無駄な話が一切無かったのである。つまり、視聴者にホラーとしてのジャンルを勘違いさせかねない場面も、しっかりと物語の一部として機能していたのである。
序盤では下手に見えた設定も、最後にはそれこそが至上の設定であると思い直す展開になっていた。
一つだけ例を挙げておく。
主人公の記者は、援助交際事件の闇を暴いたせいで加害者かその同情者らしき連中に追われる事になり、友人の夫の別荘に引っ越しをすることになる。そしてその家で怪異に遭う。
当初はこれを、「呪われた家」に一人で住む事になった経緯を自然に説明するための話であると思っていた。そして身を隠さなければならない事件となると、政治かマフィアがらみの方が良いと、我々はケチを付けていた。だが、やがてこの設定がじわじわと活かされてきたのである。
また「主人公が命を失うのが自然な二つの危機に同時に遭遇し、それが同時だったせいで却って助かる」という設定であるかのような場面があった。
この偶然を御都合主義的な主人公補正だと皆で嗤っていたのだが、やがて必然的な展開であったと判明して、恐れ入ったのである。
久々に満点を付けられる映画に出会った。ホラー映画に満点を付けるのは、ひょっとしたらこれが人生で初かもしれない。
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ところがこれまた、かなり見事な構成の作品だったのである。
ある高校で突然死をした生徒の幽霊と、その子の声が唯一聞こえる友人とが、事件の謎を解いていくというものであった。
全体的に色調がセピア色で、郷愁を呼び起こされた。
そして自分はセピア色から「懐かしさ」を連想する最後の世代なのか、それとも約束事としてもうしばらくこの伝統は続くのか、などと考えさせられた。
こちらの物語もどんでん返しが多く、中々良かった。