岩井志麻子著『十七歳』(徳間書店・2007)を読んだ。著者の長編も読んでいこうと思った。

十七歳

十七歳

 岩井志麻子氏の『現代百物語』シリーズを読み、自由な長さで書いた作品も読みたくなり、『ぼっけえ、きょうてえ』を読んで感動をしたという話は、以前書いた通りである(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20170203/1486059545)。
 これにより、短編については今後も読んでいこうと考えた。
 長編も読んでいくかどうかについては迷ったので、とりあえず近所の図書館に置いてある著者の作品群の内、長編で、題名が特殊でなく、しかも章が細かく分かれてなさそうなものを選んで試しに読んでみる事にした。そういうスタンダードな長編も面白ければ長編も読んでいき、つまらなければ短編だけ読んでいこうと思ったのである。
 そうして選んだのがこの『十七歳』であった。
 読んでみると、まさに現代百物語から著者を知った者のために書かれたような内容であり、運命を感じさせられた。
 主人公「林あや美」は著者の分身的存在であり、身近の怪事件や怪人物や業界の奇怪な裏情報を面白おかしく短いエッセイで紹介していく作家であった。物語に関わるエッセイは、作中作品として原則として全文が掲載されていた。
 そして主人公が書いたエッセイの背景事情や、執筆が切っ掛けで出会う次なる怪事件等が、地の文で長く語られるという訳である。
 現代百物語の中の一部の話の簡潔過ぎる記述に不満を持ち、「もっと知りたい、もっと膨らませて欲しい!」と悶えた自分としては、その不満を完全に解消してくれる一冊であった。
 なお、長編なのに中弛みが無かった。
 これは、ホラーとミステリーを融合させていたからであろう。終盤まで黒幕がいるのかどうかが不明であり、仮にいたとして誰なのかも不明だったのである。
 この手法は最近視聴したホラー映画『ボイス』(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20170209/1486580960)を思い起こさせた。
 以上の次第により、今後は著者の作品は、短編・長編を選り好みせずに読んでいこうと決めたのである。
現代百物語 嘘実 (角川ホラー文庫)

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ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

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ボイス [DVD]

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