『牙狼<GARO>〜魔戒ノ花〜』全話視聴計画(第4〜6話)

第4話 映画
 今回のオープニングは、モノクロ時代のホラー映画を意識したものへと変更されていた。
 話の内容は、ホラー映画を愛好する寂れた映画館の館長「ハリマ」が、オーナーと対立した挙句に「イルギシン」に憑依され、犠牲者をホラー映画の中に誘って殺すというもの。
 最初の犠牲者はオーナー。ゾンビ映画の中に閉じ込められる。
 この映画のゾンビの多くは、肉体の原型を保ったままゆらゆらと歩いて追ってくるタイプであり、ジョージ=ロメロ風である。ハリマも、おそらく"Night of the Living Dead"を指すと思われる「1968年のジョージ=ロメロの映画」を観ていれば助かったかもしれないのにと、オーナーに語りかけている。
 しかるに、一匹だけ体中がほとんど腐敗しきったゾンビも登場する。これはルチオ=フルチが開拓した、新しいタイプのゾンビである。これを登場させたのは、『牙狼GARO>』制作陣のミスなのか、はたまたハリマが真のホラー映画ファンではない事を暗に示そうとした意識的なものなかは、謎である。
 なお、追い駆けてくるゾンビの俳優の中には雨宮監督自身も交じっている。「ゾンビが大好きな監督がロメロ風のゾンビ映画を作って自分もゾンビとして出演する」というこの態度そのものが、"Flesheater"のビル=ハインツマンへのオマージュになっている。
 後半では雷牙も映画の世界に入る。イルギシンはロメロ流のソンビでは流石に魔戒騎士には勝てないと踏んだのか、「テアトル昭和」の館長でありながら二十一世紀の"28 Days Later"系のゾンビを投入し、それが負けるとゾンビ映画ではない"Scream"の力を借りる等、勝つためなら何でも良いという姿勢を示す。
 終盤、ホラーとしての姿を現した後のイルギシンは、デジタルのクリーチャーは許せないという立場から「何が『牙狼』だ!」等の二重の意味の発言をしながら牙狼に襲い掛かる。
 フィルムで構成された世界の主だけあって弱点は火であり、雷牙は烈火炎装で勝利する。第4話で烈火炎装が出てくる辺り、初代『牙狼』を強く意識した構成である。
 事件解決後、ザルバも雷牙に対して「お前の主演映画はいつ観れるんだ?」と、これまた所謂「メタ発言」をしていた。雷牙はそれをまるで無視するかのようにスクリーンの方に目を遣るのだが、カメラの位置のせいで、丁度視聴者に向かって笑顔で「請うご期待!」というメッセージを送る雰囲気になっていた。
 最後の最後までサービス満点の回であった。
 なお、雷牙の絵が下手であるという設定が登場していた。そしてそれが遺伝という観点からは意外であるという意味の発言がゴンザから吐かれていた。これで間接的に、母親が御月カオルである可能性の高さが示唆されたと言えよう。
 余談だが、ハリマを演じた「きたろう」氏は、今回の放送の僅か約二十日前には、『世にも奇妙な物語』でやはり映画館の館長級の役を演じていた。

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第5話 星図
 今回からクロウも正式にエイリス探索の任務に同行する。
 「クロウ」の名が称号であり、本名は「幻影騎士」であるために不必要(秘密?)という設定が語られる。
 私は『MAKAISENKI』「同胞」を視聴した際、四十万ワタルが自分の名を明かしながらも、魔戒騎士候補生達の本名は魔戒騎士になれないかもしれない者には教えられないという立場を採っていた事を、非常に奇妙に感じた(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20120121/1327123638)。だがあれはひょっとしたら、「魔戒騎士は本当は原則として名を知られても良いが、候補生の一部は名前を秘匿しなければならない幻影騎士になるから、お互い本名を秘密にしろ」という意味のメッセージを、幻影騎士の存在自体を隠すため、子供向けに方便として語った台詞だったのかもしれない。
 またクロウの長年の相棒の魔導具「オルヴァ」が飛行して偵察や戦闘を行える事や、クロウの漢字表記が「吼狼」である事や、クロウが変身時間を約二十秒間減らす代わりに飛行形態になれる事等、クロウに関する設定が次々と明かされた。
第6話 風鈴
 ゴンザが整理整頓をしている場面で、カオルの著作『白い霊獣と秘密の森』が出てくる。
 ここでは、雷牙が少年時代に作った思い出の風鈴も出てくる。
 そしてかつてその風鈴作りを指導した風鈴職人が、今回のホラーである。誰であろうとホラーを斬るという雷牙の使命感や、斬る事こそが憑依された人物への救済である事が示された回であった。
 風鈴職人を演じたのは松方弘樹氏。「ちょっと豪華過ぎやしないか?」と当初は思ったのだが、敗北後の一瞬の表情で上述の情報を伝えた場面を見て、やはりベテランを起用して正解な脚本であったと思い直した。
 他の注目点としては、雷牙の母親が着ていたという浴衣に興味を示して自発的に浴衣姿になったマユリが挙げられる。
 初代『牙狼GARO>』は女性主人公の影響で徐々に多様な感情を見せるようになっていった男性主人公を描いた作品であったが、『魔戒ノ花』はこの点に関して男女の役割を交代させた作品であると言えよう。