初代『仮面ライダー』で、仮面ライダー2号登場直後に撮影されていたはずのキノコモルグとの戦いが第24・25話まで後回しにされたことについては、批判も多い。
最大の悪影響は、すでにショッカーの存在を知っているはずの石倉五郎が簡単に騙されてしまう場面であり、これについては私も同意である。
しかし23~26話までの流れをショッカーの視点で考えるならば、これほど素晴らしい配置は無いのである。
23話では御人好しで有名なムササビードルが、仮面ライダー2号に騙されたり、約束通り人質を解放してそのせいで敗死したりしていた。
これはショッカーの脳改造手術の限界を示すと言ってもいいだろう。過去の事例から「首領への忠誠」や「無慈悲」を植え付ける事はどうやら可能のようだが、「約束を破る卑怯さ」や「犯罪のプロとしての狡賢さ」は与えられなかったのである。
おそらく、だからこそ第1話で、脳改造直前の本郷猛をわざわざ目覚めさせた上で説得をしたり諦めの境地に至らせようとしていたのであろう。第17話でピラザウルスが正気に戻ったのも、脳改造の拙劣さの証明である。
御人好しで紳士的なせいで敗れたムササビードルの失敗から学んだからこそ、いっそ脳改造をせず、偶然ショッカーと利害が一致していた無期懲役囚13号の肉体部分だけを改造するという手段を選んだのであろう。
しかしこのキノコモルグは自由意志が残っていたため、より残酷な手段で相手を殺したいという気持ちが出てしまい、仮面ライダー2号と滝和也を殺す機会をそれぞれ一度ずつ無意味に逸してしまった。
そこで最後の手段として怪人とは別個に第26話でゾル大佐が日本支部に送り込まれてきたと考えれば、完全に一連の物語となる。
そういう意味ではキノコモルグこそショッカー幹部の原形であり、ゾルに先行する第零人目の幹部とも評価出来るのだ。