誰に投票したかは秘密にしておきたい私

 私は、選挙の前に友人から「誰に投票するつもりか?」と聞かれると、しっかり答える場合が多い。しかし、選挙の後で「誰に投票したか?」と聞かれても、一度も答えたことがない。
 憲法第15条が保証する秘密投票は、権利であって義務ではないので、この態度を他者に押し付けようとは思わない。
 ただ、考えてみて欲しい。例えば、X人の候補者がいた選挙で、(X−1)人の候補者に投票した人々全員が自ら投票の秘密の権利を放擲した場合、それ以外の人の秘密は自動的に暴かれてしまう。
 実際には嘘や無効票もあるだろうが、人口の少ない市町村の議会選挙なら、これに近い事が起きても不思議ではない。
 そうした理由から、私の様な投票者がいる事は、秘密投票の理念に資するのではないかと思うのである。
 勿論、皆がそうなってしまうのも危険だ。誰もが完全に秘密を守った場合、悪質な票の操作が陰で行われていても発覚しにくくなってしまう。
 よって、特に出口調査等に対して、率先して自分の秘密を暴露するタイプの人間の存在も必要となってくる。
 陰と陽、互いに逆の道を歩みながら、選挙という制度を支えているのである。