前回(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20091221/1261324786)予告した、日本国と天皇家に関する、ほとんど誰も困らずしかも皇居市国化案程手続きが煩瑣でない改革案を、発表したいと思う。
本題の前に報告しておきたいが、知人との電話で皇居市国化論の新たな欠点が見つかった。
それは、日本国が皇室外交という手段を失う事である。
石油危機以前には日本の政治家達が軽視していた中東諸国の要人を天皇家が大切にもてなしていた事が、石油危機を乗り切る一つの力となったという話を聞かされたのである。
目先の利害に左右されない外交なら実権の無い大統領でも可能かもしれない。しかし直接選挙であれ間接選挙であれ政党の力を借りて大統領になった人物は、本心とは別に特定の国を贔屓する姿勢を強制されかねない。また大統領職が終身制でない場合は、野に下った後の事を考えて特定の外国と通謀しかねない。
小国の票を集めるためにも、特定の大国を嫌う首相が誕生した時に当該国への刺激を和らげるためにも、皇室外交には相応の利点があると思われた。
そうした訳で、日本国に天皇家を残したままにする今回の案を、前回の案の単なる付録とは思わずに読んで欲しい。
今回の案は、「天皇に後継者指名権を奉還する。」というものである。
明治維新政府は、武家の制度に過度に偏った内容の皇室典範を制定し、天皇の後継者指名権を剥奪した。そろそろ天皇に後継者を選ぶ自由を少しは返してみてはどうだろうか?
皇室典範に、息子がいる場合に兄弟を指名してはならない等の規定を作りさえすれば、憲法第2条は改正せずに済むし、権利の濫用も防げる。
天皇が好きな人の多くにとっては、その権利が一つ増える事は喜ばしいであろう。
しかもこの権利は国政とは無関係なものなので、民主主義の退潮を意味しない。
天皇制が嫌いな人の多くにとっては、単に前任者の長男に生まれ親が崩御するまで生きていたというだけでは国の代表になれるとは限らなくなる事は、一歩の前進である筈だ。
今まで皇位を確実に継ぐ事を前提に人生設計をしてきた人を困らせないためには、この改正が成立した時点で皇太子であった人物だけは自動的に皇位を継げるとすれば良い。
また後継者指名の儀式が行われないまま天皇が崩御した場合に備え、選帝侯を置くのも良いだろう。不測の事態等において有力者達が次の天皇を選ぶのも、日本の伝統であったのだから。
現行の皇室会議の構成員の出自は立法府に過度に偏っているが、選帝侯の構成では三権を平等にすべきである。また天皇制の伝統は北海道と沖縄をカバーしていないという批判に応えるため、アイヌの有力者と尚氏から一名ずつ招く。他にも藤原氏の氏の長者や出雲国造家から招いても面白い。日本国籍を取得している方の範囲内でなら、旧大韓帝国の皇族である李氏から招くのも良いだろう。