インテリへの最大の嫌がらせ【理論編】

 インテリへの最大の嫌がらせは、話の通じない人間を意図的に装い、しかも一見しただけではその異常性が目立たない程度には人間性を保った上で、目の前で触法しない範囲で暴れてみせる事だろう。
 これはまず、人間と言う種全体への侮辱になる。「貴方は偶然賢いかもしれませんが、貴方が所属しておられる集団にはオイラみたいなのもいるんですよ。理性?礼節?近代?所詮全てまやかしです。現実に目を向けませんか?」という主張を匂わせて、不快感を誘うのである。
 また智者は一般に「御高く留まる」事を常に自制している場合が多い。そのため、「自分より更に優れた誰かならば、この愚者をも導けた可能性がある。」と、つい余計な反省をしてしまうのである。
 かといって無視しても不愉快になる。遠目には自分の方が負けたり逃げたりしたかの如く見られる可能性への恐怖に苛まれる。
 こうした不快感への対策としては、生物学上の「人類」に対する同朋意識を極限まで低下させるのが、おそらく最も有効な手段であろう。件の悪人及び彼等にも理があると思い込んだ連中に、確実に存在する自己のそれになぞらえて想定していた「人格」を爾後認めないという決断をするのである。つまりは、「御高く留まる」しかないのだ。
 嫌がらせとは他者に不快感を与えて快楽を得る行為であり、そもそもそれだけでも相当卑劣なのだが、この嫌がらせは加えて全世界の博愛精神の量を低下させる事につながるし、なおかつ本当に頭の悪い人の存在を悪用しているという点で非常に許し難い行為である。
 そしてこの嫌がらせは、ネットにおいて行われる事が多い。ネット上の悪事は、その匿名性故に現実に存在する個々人の責任を追及するのが難しい。倫理・道徳の違反だけでは直接加害者に手が出せず、被害者は法が登場するレベルにまで被害が拡大するのを待たねばならない。そうした環境を利用し、議論している態度に見えなくもない範囲で暴れ、いざとなれば「自分は馬鹿なので誤読していた。」と言い逃れるという寸法だ。これこそ現在最も高度で卑劣な荒し方であろう。
 しかしまた、証拠の保全やそれに基づく加害者像の詳細な分析が容易なのも、ネットならではの利点である。私は最近身近で採取に成功した典型例を【実例編】と銘打って紹介する事も考えている。