小学生にも、秘密投票の権利を!

 大村敦志著『フランスの社交と法』(有斐閣・2002)の148ページに、著者の子供の小学校での学級委員選挙の話が登場する。なんと、カーテンのかかった投票ボックスに一人ずつ入って投票したとの事である。少々驚かされたが、直後に驚いた自分の方こそが異常であると反省した。
 私の通った小学校では、児童会の役員選挙は流石に秘密投票であったが、クラスの中での役員を決める選挙は挙手制で済まされていた。これがため、「Xに恨まれると後が面倒だ。」等の動機が選択の決断の際に強く影響した。男子一名対女子一名の一騎打ちの場合等では、国会における総理指名選挙に等しい程の「党議拘束」があった記憶もある。
 以前私は日本国憲法第15条4項の精神にもとる発言を批判したが(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20081109/1226163968)、小学校がこの様な環境では、15条4項の精神を体得しないまま育ってしまう人が多いのも当然である。
 勿論、この条文の理念に意識的に反対するのは自由だが、国民主権という枠組みは承認しておきながら選挙人批判をしている人の大半は、おそらく無意識的に15条4項を無視していると思われる。
 15条4項は、主権者の無答責を定めている点に着目すれば、大日本帝国憲法でいえば第3条にあたる、大切な条文である。実務上の権力者に過失があった場合に、その選任について主権者にも少しは過失が観念し得るからといって、一々責任を負わせて今日は共和制明日は君主制等と国制までをも激変させ続ける事は、費用対効果の観点だけから見ても愚かしい行為である。
 またそこまで大上段な話を脇に置いたとしても、小学校からの秘密投票の徹底は、「いじめ」の被害を少しは減らす方向に働くであろう。

フランスの社交と法

フランスの社交と法