『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』の限界が逆に教えてくれたもの

 ジョージ=ロメロ氏の制作するゾンビ映画は、社会批判が盛り込まれている事で有名である。
 最近私は、最新作の『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』を鑑賞してみた。
 イラク大量破壊兵器が存在しなかった事等を強調し、全編を通じて「マスコミは信用ならん!」というメッセージを伝え、you tubeが切り開く新たな可能性を示唆していた。銃社会への批判も要所要所にちりばめられていた。
 ところがである。中盤で東京の女性が撮影した動画が登場し、「死体を埋める前に頭を撃って!」だのと主張していたのである。
 実に残念であった。アメリカでは反体制知識人制作の映画ですら、「せかいじゅうみんなじゅうをもっている。」というアメリカの常識に汚染されていたのである。
 ついでに言うと、ロメロ氏は結局は降板になったものの、日本のゲームソフトである『バイオハザード』の映画化にも少しは携わっていた筈だ。その氏にしてなおこの有様かと、暗澹たる気分にさせられた。
 ただ逆に言えばこれは希望でもあると思い直した。アメリカ人が外部世界の情報を知りぬいた上で、それでも敢えて理知的な計算の上で銃社会や戦争といったものを支持しているのなら、これは思想の自由を尊重する観点からも諦めるしかない。しかしインテリをも含めて外部をほとんど知らないという条件下での現状なのだから、今後情報化・国際化が進む事で変化がもたらされるかもしれないのである。
 核兵器の問題に関してもこれは言える。『ロボコップ3』等のアメリカ映画を観て「こいつらは核の怖ろしさがまるで分かっていない!」とイライラした経験をお持ちの方は多いだろう。だがそこで踏み止まり、イライラを希望に変えて欲しい。
 そういえば、もうすぐ『はだしのゲン』の英語版が完結するとの事である。悲劇の実態を知った上で原爆投下の善悪の判断を決めるアメリカ人が一人でも増える事を期待したいものである。
バイオハザードディレクターズカット デュアルショックVer.

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